関西現代俳句協会

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3月1日
今月のエッセイに、衛藤夏子さんの「邦題のつけ方、季語の選び方」を掲載しました。
2月4日
青年部のページに関西ゼロ句会(2025年3月9日)のお知らせを掲載しました。
1月8日
会員の著作に、川崎雅子さんのエッセイ集『玉手箱から』を掲載しました。

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2025年3月のエッセイ

邦題のつけ方、季語の選び方

衛藤夏子

 今、公開中のニコライ・アーセル監督「愛を耕す人」は、格差社会の中、開墾地を孤独に耕す退役軍人の主人公が、人生の終わりに大切なものに気づくといった描写のあるデンマーク・ドイツ・スウエーデン合作映画でした。
 原題はデンマーク語で、ろくでなし、にせもの、といったあまり良い意味ではない単語だそうですが、英語から日本語に訳されると、「愛を耕す人」とメルヘンチックな言葉の題名になっていました。

 先週観たジエシー・アイゼンバーグ監督の「リアル・ペイン~心の旅~」は、リアル・ペインを本当の痛みと訳さずにそのまま使い、心の旅という副題をつけたアメリカ映画です。
 ユダヤ人の従弟同士が、亡くなった祖母がいたポーランドの収容所を訪ねる旅を描いた物語です。

 「映画を愛する君へ」は、アルノ―・デプレシャン監督の自伝的エッセイ風のフランス映画の邦題です。監督自身が影響を受けた五十本以上の映画を、哲学者や批評家の言葉も引用しながら、自身の成長と絡ませて語っている内容です。
 原題は、観客、目撃者、傍観者などという意味の単語です。それが、日本語になると、親愛の意味も加味されて、「映画を愛する君へ」という長い言葉になりました。

 古典的名作「風とともに去りぬ」「ゴットファザー」「ひまわり」のように、原題がそのまま、邦題になっているものもたくさんあります。

 洋画を観たあと、必ず、原題を調べてみます。
 エンドロールに記載されていますが、わたしの語学力では訳せないこと多く、最近はネットで調べます。
 たいがいは、映画の内容の要約やキーワードが多いのですが、「愛を耕す人」や「映画を愛する君へ」のような飛躍したものもあります。
 賛否はありますが、飛躍した題名を知ると、何故かしら、どこからついているのかな、と考えるのも楽しいです。

 自分でわからないときは、イギリス人を夫に持つ映画好きの友人に聞いてみることもあります。
 英語と映画に造詣の深い彼女は、日本語との微妙なニュアンスの違いを教えてくれます。

 邦題をつける、という思考は、わたしの中では二句一章の、取り合わせの俳句の季語を選ぶ行為に少し似ているなあ、と最近思っています。
 原題からさらに飛躍した、日本人に伝わる題名を考えることは、取り合わせの文章にふさわしい季語を選ぶ、微妙にかすっているような関係に近い気がするからです。 

(以上)

◆「邦題のつけ方、季語の選び方」:衛藤夏子(えとう・なつこ)◆

  

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2025年

タイトル 作 者
2月 ターニングポイント 岡 温子
1月 さまざまな私へ 久保純夫

◆2024年

タイトル 作 者
12月 実家の石灯籠 田中公子
11月 「雨」と「漣」 金山桜子
10月 酒と俳縁 西谷剛周
9月 筋肉は騙さない 村上春美
8月 出合った句、出逢った人 三田陽子
7月 春の到来 妹尾 健
6月 らんまん 西村耕心
5月 俳句と自然体験 大西可織
4月 「夏への扉」 新井博子
3月 藍の晩年 若森京子
2月 俳とは文芸のピアニシモ 穂積一平
1月 運に恵まれて 志村宣子

◆2023年

タイトル 作 者
12月 俳句小屋「げんげ」 西谷剛周
11月 晩年を楽しむ 神田和子
10月 兎―季語の背景にあるもの 外山安龍
9月 よろこびの子 太田酔子
8月 詩になる言葉の法則性 斎藤よひら
7月 象の位階(従四位) 内田 茂
6月 あっ、ご近所にコウノトリ 石井清吾
5月 古文書を学んで 片岡宏子
4月 俳句放浪記 中村聰一
3月 平成中村座を追いかけて こにし桃
2月 スマホの世なれど蠅には蠅叩き 塩野正春
1月 ハリコフの日曜日 花谷 清

2022年

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