関西現代俳句協会

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6月10日
かみがた通信句会投句フォームを設置しました。
(投句締切6月30日 23:59)
6月8日
会員の著作に、久保純夫さんの句集『季語情況論』を掲載しました。
6月1日
今月のエッセイに、西村耕心さんの「らんまん」を掲載しました。

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2024年6月のエッセイ

らんまん

西村耕心

 歳時記の項目にも挙げられる「植物」。
 その日本の植物学の礎を築いたのが牧野富太郎だということを、多くの方は「らんまん」というドラマで知ったのではないでしょうか。
 それまで、ほとんどの人は牧野富太郎という人物がいたことさえ知らなかったでしょうし、ましてや、牧野富太郎植物図鑑なぞ目にしたこともなかったでしょう。
 どちらかというと、ドラマの後半に実名で登場する(と言っても手紙だけでしたが)和歌山が誇る「知の巨人」南方熊楠の方が知られていたのではないでしょうか。
 私はよもや牧野富太郎を主人公にしたドラマがつくられるなんて、思ってもみませんでした。
ですが、地元高知では牧野は郷土の名士として知られ、高知市街からほど遠くない牧野植物園に足を運ぶ方も少なくないそうです。

 そんな牧野富太郎と私が出会ったのは、私が大学4年生で植物分類学の研究室に入ったときです。
 大学の研究室の本棚に北村四郎、大井治三郎等の植物図鑑の横に、ひときわ古くてボロボロになった(それだけいままで使われて続けてきた)牧野富太郎植物図鑑が並んでいました。
 うちの研究室は一応植物分類学の看板は掲げていましたが、日本の大学で純粋に植物分類をやっているところなんて当時からほとんどありません。
 もう、日本のフロラ(植物相)はほぼ調べつくされていますし、純粋に植物分類をやっている大学は、主に海外の植物が研究対象らしいのです。
 うちの研究室も例外に漏れず現代の植物ではなく、古い時代の植物(植物化石)を研究していました。
 化石と云っても、石化するほど古い植物は対象外で、比較的新しい(といっても数百万年ほど前の)地層から出てくる植物の種子や果実・花粉などを研究していました。
 これらの化石は石化しておらず、ほぼ現生のものと変わりませんので、植物遺体とも呼ばれています。
 そして、その出土した植物遺体がどの植物のものなのか(この過程を「同定」といいます)ということを調べていました。
 私の研究室にはかつて三木茂という先生がおられました(私が大学生のころにはすでに亡くなっておられましたが)。
 彼は植物遺体として出土した標本にメタセコイアと命名した人物です。
 その後、メタセコイアは現生種が中国奥地で発見され、いまでは滋賀県マキノの並木をはじめ、公園や学校で普通に見られるようになりました。

 出来の悪い私は、その研究室に“3年”もいたにも関わらず、全然植物の名前が覚えられず、ありふれた草木でさえいつも「おまん(お前は)誰じゃ」と云う始末。
 俳句を始めることがわかっていたら、もう少し勉強しておけばよかったと後悔しています。

 さて、表題の「らんまん(爛漫)」ですが、花が咲き乱れる様を云うそうですね。そういえば、私が出た大学に伝わる“逍遥歌”、その題名は「桜花爛漫月朧」。
 大学在学中から、卒業しても同窓会のたびに、夏であろうと冬であろうと年がら年中唄ってました。本当は春に唄うのが正しいのですね。

(以上)

◆「らんまん」:西村 耕心(にしむら・こうしん)◆

  

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2024年

タイトル 作 者
5月 俳句と自然体験 大西可織
4月 「夏への扉」 新井博子
3月 藍の晩年 若森京子
2月 俳とは文芸のピアニシモ 穂積一平
1月 運に恵まれて 志村宣子

◆2023年

タイトル 作 者
12月 俳句小屋「げんげ」 西谷剛周
11月 晩年を楽しむ 神田和子
10月 兎―季語の背景にあるもの 外山安龍
9月 よろこびの子 太田酔子
8月 詩になる言葉の法則性 斎藤よひら
7月 象の位階(従四位) 内田 茂
6月 あっ、ご近所にコウノトリ 石井清吾
5月 古文書を学んで 片岡宏子
4月 俳句放浪記 中村聰一
3月 平成中村座を追いかけて こにし桃
2月 スマホの世なれど蠅には蠅叩き 塩野正春
1月 ハリコフの日曜日 花谷 清

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