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今月のエッセイに、こにし桃さんの「平成中村座を追いかけて」を掲載しました。
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2023年3月のエッセイ

平成中村座を追いかけて

こにし桃

 『平成中村座』。公演場所が聞こえてきたら心はいそいそし始める。

 『平成中村座』は平成12年に18代中村勘三郎らが作った江戸時代の芝居小屋を模した仮設劇場である。仮設なので、日本国中、そして世界中に小屋が建つ。

 私が初めて歌舞伎見物したのが『平成中村座』で10年以上も前の事。子どもの頃から舞台を観るのがとても好きでジャンルは問わない。今、歌舞伎を観ることが多く、中でも芝居小屋での見物がとても心地良い。『平成中村座』は私の英気を養う場で、小屋が建つと分かれば可能な限り追いかけたくなる。

 観劇を趣味に持つと観劇の為に出掛けていくことを「遠征」と呼ぶ。日帰りが出来ない遠征の準備は、公演の初日や千穐楽などの日の周辺のホテルの空室がなくなる前に先ず、片っ端からホテルを予約する。キャンセル料は宿泊日間際まで掛からないので、ゆっくり後からキャンセルすれば良い。ホテルの料金には早割のプランもあり、飛行機でも新幹線でも早割の設定が多くある。予約は早い方がお得度がある。その為、情報収集は必須だ。ポイントやマイレージは遠征の大切なツールなので、どのクレジットカードを選ぶかも重要なポイントでもある。

 趣味の為には、情報収集と使える知恵と、調べる努力を惜しまず、出来うる限り費用を抑える。これが極意。

 歌舞伎は江戸時代に産まれた大衆の娯楽。

 かつて江戸時代の人々が楽しんでいた芝居小屋での上演が芝居好きの心に響く。

 今や世界中の劇場では当たり前に備わっている「回り舞台」や「花道」「宙乗り」は歌舞伎が発祥で、舞台装置・機構は当時から世界の最先端であった。

 雨の音も飛行機の飛ぶ音も自動車の騒音も台詞と一緒に聞こえる。冷暖房は完備してはいるが、季節の温度を直に感じる客席だ。

 明るすぎない照明や人力で回す回り舞台。役者の息使いが聞こえ、汗が飛び散る舞台と客席の距離。役者だけでなく、柿色の作務衣を着た劇場案内人である「お茶子」と呼ばれるスタッフが、入場の列やお手洗いの長蛇の列でさえ、時間の経過を感じさせないようなトークでもてなし、細やかな気配りは素晴らしく「彼女ら」もエンターティナー。小屋の入り口を入ると「五軒長屋」が軒を連ねる。江戸の職人の技や文化が感じられる歌舞伎にゆかりのある品々が並び、製作の様子も見られる。中村屋にちなんだ品々も購入出来、会場一体となって、大衆に寄り添う演劇が『平成中村座』にはある。エンターテインメントが詰まった平成中村座の空間だ。

 この空間に出会う為、次の公演場所が聞こえてきたら心はいそいそし始める。

    子別れの台詞かき消す秋の雨    (2022秋 平成中村座)

(以上)

◆「平成中村座を追いかけて」:こにし桃(こにし・もも)◆

  

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2023年

タイトル 作 者
2月 スマホの世なれど蠅には蠅叩き 塩野正春
1月 ハリコフの日曜日 花谷 清

◆2022年

タイトル 作 者
12月 俳句史というもの 木村和也
11月 コスモスの波間 弓場あす華
10月 「住めば都」 杉井真由美
9月 私の居場所 江連彰子
8月 初夏の早朝の散歩あるいは仮想空間のある風景 今村タケシ
7月 題詠とドリフ 木村オサム
6月 実況アナ、レース出るってよ 稲野一美
5月 わたしの体、わたしの血 池田奈加
4月 薪ストーブサウナの歓び 岡村知昭
3月 安満遺跡公園 星野早苗
2月 あの頃 赤窄 結
1月 コロナ禍の中で 高橋将夫

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