関西現代俳句協会

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11月23日
会員の著作に、横田明美さんの句集『砂時計』を掲載しました。
11月1日
青年部のページを更新しました。
11月1日
今月のエッセイに、弓場あす華さんの「コスモスの波間」を掲載しました。

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2022年11月のエッセイ

コスモスの波間

弓場あす華

 「コスモス満開やねんて! 観に行かへん?」

 スマホ片手に、娘が部屋に入ってくる。故郷の再発見に余念のない彼女。最近は種々の情報を味方に、サイクリングを楽しんでいる。

 おむすびにおやつ、コーヒーとミネラルウォーターをリュックに詰めて出発。

 飛鳥川の流れに沿ってペダルを漕ぐのは爽快だ。少し控え目な川音に寄り添うように、コスモスが揺れる。

 柔らかな日差の中、天香久山の麓に刈田となった田園風景が広がる。午後の日が深く入る竹林を眺めていると、上空に帆翔する影を認めた。

 「青鷹だ!」

 真白な羽裏に琅玕の風を湛え、香久山の空を舞う雄姿に心が震える。青鷹が香久山の奥へと帰って行くまで、私たちはその姿を見つめていた。

 そして、藤原宮跡に到着。いくつかの区画に分けられた敷地は、かつて条里制をしいた都城であったことを思わせる。ここは長い間、発掘調査のためブルーシートで覆われ、蒼古としたイメージのまま記憶の中に寂びていた。

 しかし今、目の前にあるのは、明るい空に照らされた広やかな都の跡。土の下には、記紀万葉の風が眠っている。何万株にも及ぶ色とりどりのコスモスが揺れるたび、赤や白、ピンクの帯がたゆたう。幾久しい安泰の御代を念じた女帝の祈りが、コスモスの花を咲かせているのだと思った。

 コスモスの波間を縫って、小さな子どもたちが遊んでいる。花と光と影が、子どもたちの姿を追いかけている。風の中を子どもの声が通って行く。ランドセルを背負った五、六人の子どもが一列になって、宮跡を横切って帰るのが見える。

    コスモスや空の観ている鬼ごっこ
    下校子の列コスモスの風の中

 畝傍山に夕光が差し、宮跡をくれない色に染める。満場のコスモスの喝采を受け沈む夕日。その瞬間もまた、秋のサイクリングの行程であった。

(以上)

◆「コスモスの波間」:弓場あす華(ゆば・あすか)◆

  

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2022年

タイトル 作 者
10月 「住めば都」 杉井真由美
9月 私の居場所 江連彰子
8月 初夏の早朝の散歩あるいは仮想空間のある風景 今村タケシ
7月 題詠とドリフ 木村オサム
6月 実況アナ、レース出るってよ 稲野一美
5月 わたしの体、わたしの血 池田奈加
4月 薪ストーブサウナの歓び 岡村知昭
3月 安満遺跡公園 星野早苗
2月 あの頃 赤窄 結
1月 コロナ禍の中で 高橋将夫

◆2021年

タイトル 作 者
12月 ふる里の「男爵いも」 宮武孝幸
11月 季語の周辺 津野洋子
10月 澪とワタシ とよだ澪
9月 峰定寺と日本一の花脊の杉 仲井タミ江
8月 だまし絵としての「第二芸術」 鈴木ひさし
7月 僕と俳句 西田唯士
6月 今後 横井来季
5月 北国の春 音羽和俊
4月 屋根と花 小西雅子
3月 俳句とコミュニケーションについて 妹尾 健
2月 形見の餅 上森敦代
1月 新型コロナ時代の句会 岡田耕治

◆2020年

タイトル 作 者
12月 見るということ 石井 冴
11月 雪国と酒粕 村田あを衣
10月 窯神 山田 和
9月 夢ものがたり 三木星童
8月 縁―正岡家の人々 瀬川照子
7月 鶏の話 千坂希妙
6月 再会 江島照美
5月 八ヶ岳縦走記 植田かつじ
4月 水仙花 中村純代
3月 四郷の串柿 満田三椒
2月 学生結婚と情熱と言葉 衛藤夏子
1月 ひととせの蝶 鈴鹿呂仁

◆2019年

タイトル 作 者
12月 言葉に出会う 榎本祐子
11月 いまを生きる 山﨑 篤
10月 雅号の薦め 吉田星子
9月 「変容」について 金山桜子
8月 鯰と鼬 髙木泰夫
7月 レオン 横田明美
6月 茨木市、一つの俳句史 藤井なお子
5月 俳句に気を許す 塩見恵介
4月 あるコンサートで思ったこと 吉田成子
3月 初学のころ 久保純夫
2月 便船塚 おおさわ
ほてる
1月 観光公害 宇多喜代子

◆2018年

タイトル 作 者
12月 新とか旧とか 小林かんな
11月 三種の神器 出口 善子
10月 「卒業」の話 野住 朋可
9月 ヒロシマの首飾り 花谷  清
8月 朱夏のネアンデルタール人 柳川  晋
7月 一人がため 曾根  毅
6月 兜太氏と秩父の思い出 桂  凜火
5月 選のチューニング 小池 康生
4月 高野素十のコントラスト視点 橋本小たか
3月 式年開帳 蔵田ひろし
2月 わたしの俳句観 平田 繭子
1月 炉話のこと 宇多喜代子

2017年

2016年

2015年

2014年

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