関西現代俳句協会

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2月4日
青年部のページに関西ゼロ句会(2025年3月9日)のお知らせを掲載しました。
2月1日
今月のエッセイに、岡温子さんの「ターニングポイント」を掲載しました。
1月8日
会員の著作に、川崎雅子さんのエッセイ集『玉手箱から』を掲載しました。

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2025年2月のエッセイ

ターニングポイント

岡 温子

 ヨガを始めて2か月、ヨガの第一人者の講演会へ出掛けた。
 その第一声は「あなたは人の物を盗んだ事がありますか」
 当然、皆、首を横に振る。
 次に「では待ち合わせ時刻に遅れた事はありますか」 
 ザワザワする。
 「それは人の時間を盗んだ事になります」とキッパリ。

 この会で奇しくも隣り合わせた方と意気投合し、会後近くの蕎麦の名店へ直行した。
 味は良く覚えていないが、話は尽きず時間を惜しんで語り合った。
 まるで恋に落ちたように。60代のおばさん2人が。
 それ以来月に1度は会うようになった。

 忘れ難い出来事を列挙してみる。
 足腰鍛錬のため如意ヶ嶽(大文字山)へ。
 風の音、樹々のざわめき、鳥達のおしゃべりを聞きながら山頂へ。
 森林浴の中の座禅は体中の気が入れ替わり気分壮快だった。

 課外授業で清水寺の十一面観世音菩薩の温前で瞑想した折は、観音様の体内にしっかりと抱かれ温かいものを感じた。

 鞍馬寺の金堂前の「金剛床」では強烈だった。
 靴を脱ぎ中央で手を合わすと、足は強力な磁力で固定され、上半身は宇宙のエネルギーに無抵抗のまま引き上げられた。
 限界を感じた時、足を外し事なきを得たが、パワースポットの威力は本物だった。
 その後、若い人達と体験したが何事も起こらなかった。

 京都の有名寺院で仰臥禅(おうがぜん)(大の字になっての禅)を経験した。少々ややこしいが、大の字のままの私が空中にすっと浮き上がり、下の私を見詰める。
 下の私も上の私を見詰める。
 暫くして、上の私と下の私は中間あたりで一つになり静かに畳の上へ。
 幽体離脱だ。「ザ・たっち」のそれとは違っていた。

 彼女といると心地がいい。空気を美味しいと感じる。
 見えない世界を感じ、摩訶不思議な体験を通して、私は自分の変化に気付いた。
 私は癒され、とても素直になっていた。
 後で聞いた話だが、彼女の職業はカウンセラーだった。

 コロナ禍以後、彼女と会えていあないが、コロナが私の日常を変えた。
 心と体の健康を第一に丁寧に生活する事にした。
 具体的には、起床後は呼吸法、屈伸など30分。夕方は1時間のウォーキング。高野川から糺の森、下鴨神社がコースだ。
 高野川は年中、青鷺・白鷺が良く馴染み、運が良ければ翡翠にも会える。
 糺の森は、白く長い参道の美しい樹木が奥に朱の鳥居を抱いている。
 下鴨神社を詣でた後は、3年前に境内に父母の名で植樹した紅葉の前で「ありがとう」と言って折り返す。真冬でもじっとり汗ばむ。

 振り返ると、いいタイミングでいい御縁を戴き、私は本当に幸運だったと思う。

 記憶が蘇り逢いたくなって来た。彼女に逢って「ありがとう」と言おう。

(以上)

◆「ターニングポイント」:岡 温子(おか・はるこ)◆

  

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2025年

タイトル 作 者
1月 さまざまな私へ 久保純夫

◆2024年

タイトル 作 者
12月 実家の石灯籠 田中公子
11月 「雨」と「漣」 金山桜子
10月 酒と俳縁 西谷剛周
9月 筋肉は騙さない 村上春美
8月 出合った句、出逢った人 三田陽子
7月 春の到来 妹尾 健
6月 らんまん 西村耕心
5月 俳句と自然体験 大西可織
4月 「夏への扉」 新井博子
3月 藍の晩年 若森京子
2月 俳とは文芸のピアニシモ 穂積一平
1月 運に恵まれて 志村宣子

◆2023年

タイトル 作 者
12月 俳句小屋「げんげ」 西谷剛周
11月 晩年を楽しむ 神田和子
10月 兎―季語の背景にあるもの 外山安龍
9月 よろこびの子 太田酔子
8月 詩になる言葉の法則性 斎藤よひら
7月 象の位階(従四位) 内田 茂
6月 あっ、ご近所にコウノトリ 石井清吾
5月 古文書を学んで 片岡宏子
4月 俳句放浪記 中村聰一
3月 平成中村座を追いかけて こにし桃
2月 スマホの世なれど蠅には蠅叩き 塩野正春
1月 ハリコフの日曜日 花谷 清

2022年

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