関西現代俳句協会

会員の著作(2024年事務局受贈分)

  句集

『天地透く』

中村秋人

文學の森 2024年2月26日発行



 冬銀河一天四海澄みわたり

 「一天四海」とは、一天下と四海の事で全世界を言う。銀河は「天の川」、また、銀河系の別称で天漢・銀漢とも言う。
 冬銀河の空、全世界が澄み渡っているのだ。肺活量の大きい立派な秀作である。

豊長みのる・・・・・「序」より

 

 氏の俳句作品には虚や衒いが無い。いつも対象と向き合い、その折自身のこころを揺り動かした対象・ものを作句されている。だから平明で人の心を搏つのである。とは言えただの写生句では無く、氏の真の感性が煌めいているのである。

平田繭子・・・・・「跋」より

 

 幸いにして狭いながらも寺庭は四季折々の花や木々の芽吹き、小動物の姿にも命の輝きに満ち溢れていて句材に事欠かない事に気付かされました。
 これからも生きる喜び感動を五七五の文字につなぎとめる「ひと粒の真珠」としての俳句を詠み続けていきたいと思っております。

中村秋人・・・・・「あとがき」より

 

○帯「自選十二句」より

 木々の香に梅雨晴の窓開け放つ

 梯梧咲く焼土の跡の疼くごと

 蟬しぐれ今日のいのちを鳴き尽くし

 烏賊釣りの火がまなうらに旅寝かな

 生き死にの哀しみ闇を螢とぶ

 つちふるや阿蘇カルデラの沈むかに

 枯月夜隈なく透くは浄土とも

 大の字に寝て春の野のこゑ聴かむ

 冬銀河一天四海澄みわたり

 我や先人や先散る八重桜

 花野来て持て余すかに日の光

 夜の明けて一天ひらく大枯野

 

○発行所

 文學の森

 〒169-0075
 東京都新宿区高田馬場2-1-2 田島ビル8階
 電話 03-5292-9188

 (定価 2,700円+税)

◆句集『天地透く』:中村秋人(なかむら・あきと)◆

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