関西現代俳句協会

会員の著作(2023年事務局受贈分)

  句集

『恋教鳥』

江島照美

文學の森 2023年9月18日発行



 恋教鳥知らぬ前には戻られぬ

恋を知ったが100年目、もうそれ以前には戻れないという。恋に限らず、知らなければ知らないで済んだものを、一旦知ったらもう以前には戻れないのが世の常。
本句集には抒情的な流れが底流にある。「自己を客観視する冷静な目と柔らかな心」に裏付けられているのだと改めて思う。

高橋将夫・・・・・「跋」より

 

 第一句集『発火点』を上梓して四年目に、第二句集を上梓できる幸せを噛みしめております。これもひとえに高橋将夫主宰並びに「塊」俳句会の皆様の御支援の賜物と感謝申し上げます。
 この四年の聞に世界は大きく変わり、日常の常識がいかにあやふやなものかと思い知らされました。新型コロナウイルスによるパンデミックにソーシャルディスタンスと言われ、人間同士近寄ることができない日々が三年続きました。そして、ロシアによるウクライナ侵攻という悲劇。第一句集から第二句集への歳月で世界はすさまじく変化しました。

江島照美・・・・・「あとがき」より

 

○帯「自選十句」より

 驟雨来てわたしの匂ひ消されけり

 この林檎魔法か毒かかじつてよ

 赤とんぼ赤に寂しさありにけり

 狂ひ花ベートーベンを聞いたのよ

 営みの火を見て山は眠りけり

 火の国は水の国なり風光る

 青大将からまる幹の喘ぎかな

 恨みなどなかつたやうに墓参

 胸を刺す針のなくなる愛の羽根

 小春日や老いは二人を近づける

 

○発行所

 文學の森

 〒169-0075
 東京都新宿区高田馬場2-1-2 田島ビル8階
 電話 03-5292-9188

 (定価 2,700円+税)

◆句集『恋教鳥』:江島照美(えじま・てるみ)◆

▲会員の著作一覧へ