関西現代俳句協会

会員の著作(2022年事務局受贈分)

  句集

『古都逍遥』

田中 功

本阿弥書店 2022年4月28日発行



  五体打つ音冴えざえと二月堂

 一般に固有名詞を安易に扱うことは戒められているが、功さんは固有名詞に対する理解や造詣が深いことから、寧ろ作品の厚み、奥ゆきを広げる結果となっている。
 「お水取り」としで知られる修二会を詠まれた一連の作品のなかでもこの句は透徹された修行の厳しさが迫り、衿を正される思いがする。

花谷 清・・・・・「序」より

 

 私の紅藍会への入会の動機は、阪神淡路大震災の前年、平成六年に妻を亡くし、人様には寂しそうに見えたのでしょうか。そんな私を当時の「紅藍会」幹事の吉田みよゑさん、公文弘子さんが俳句会へいらっしゃいよと誘ってくださいました。「紅藍会」はその名の通り女性ばかりの会だったのですが、特例として入会させていただきました。
 若い頃から川柳はやっていたのですが俳句は初めてで、花谷和子先生の懇切なご指導をいただきました。大まかに言えば、人間を詠み、世相を詠む川柳と異なり、主として自然を詠み、季語に托して人と暮らしを詠む俳句にも興味を覚え、「座の文学」としての句会のあり方にも魅力を感じました。

田中 功・・・・・「あとがき」より


○帯「自選十句」より

 一画は木の間隠れに大文字

 夏の蝶南大門を越えゆけり

 良寛の天上大風風薫る

 初夏の風は阿修羅の六臂にも

 冬日燦師弟の句碑へへだてなく

 内陣に修二会椿の紅と白

 山粧う殊に香久山多武峰

 勅額に雪降り来たる久安寺

 稚児の太刀一閃鉾の動き初む

 摘んできた春を花背の宿の膳


○発行所

 本阿弥書店

 〒101-0064
 東京都千代田区猿楽町2-1-8 三恵ビル

 電話 03-3294-7068

 (定価 2,700円+税)

◆句集『古都逍遥』: 田中 功(たなか・いさお)◆

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