会員の著作(2020年事務局受贈分)
句集
『瑠璃蜥蜴』
桂 凛火
ふらんす堂 2020年9月4日発行
蒼穹はカッターナイフ銀杏散る
抱かれてもいいのは夜明け蓮の花
桂凜火の感度は気ままなところが新鮮である。
とにかく多彩。
金子兜太・・・・・帯文「第50回海程新人賞選考感想より」
言わば、桂凜火は写生から始めて徐々に階段を上りつつ、自己特有の個性を確立する多くの俳人とは違い、ほかの誰とも同調しない独自の世界で句を作り始めた、希有の作家といってもいいだろう。例えば、多くの初心者がまず取り組む、自然に対する目のつけどころにしても、
菫草怒りの束は光に放つ
ややオプティミズムおたまじゃくしのしっぽ
といった、極めて独自性のあるところからスタートし、
今日を跳ぶかぼそさを跳ぶ冬の虫
存在や鋭角に生え蕗の薹
などのように対象の核心部に鋭く進入し、他の誰にも真似のできない、桂自身の世界を築き上げていることに注目したい。
武田伸一・・・・・「異能の才華」より
五七五の短い俳句という不思議な形式に誘われて多くの人と出会うことができました。句会での新鮮で心地よい緊張。知らないうちに俳句をこよなく愛するようになっていました。そして、日常生活はいろいろあって日々怒濤、あっという間の十余年でした。句集『瑠璃蜥蜴』をこの度、上梓することができたことは、大きな喜びです。金子兜太師には、最晩年の十年間ご指導いただき、前掲のような心温まる批評をいただけたことはよき思い出です。
桂 凛火・・・・・「あとがき」より
○帯「自選十句」より
菫草怒りの束は光に放つ
春の宵ひと刺してきた口漱ぐ
水草生う白きリネンの匂いして
沖縄忌見て見ぬふりの指を嗅ぐ
大浦天主堂毛虫一匹入れる瓶
八月のゆるき寝息の映画館
桃ふたつかたみに息を吸うて吐く
きつねよりズルい男だ海鼠食う
フクシマやスローモーションの牡丹雪
今日を跳ぶかぼそさを跳ぶ冬の虫
○発行所
ふらんす堂
〒182-0002
東京都調布市仙川町1-15-38-2F
電話 03-3326-9061
(定価 1,700円+税)
◆句集『瑠璃蜥蜴』: 桂凛火(かつら・りんか)◆