関西現代俳句協会

会員の著作(2020年事務局受贈分)

  句集

『迷路』

四方禎治

NHK学園 2020年1月24日発行



 本句集『迷路』は、著者・四方禎治さんの第二句集です。四方さんはすでに優れた第一句集『産土』を上梓している実力俳人です。前句集は平明な詩情と豊かな表現が特長的でしたが、本著でもその特色は依然と顕著で、魅力に満ちています。早速、わたくしが殊に感銘した四方作品を中心に、鑑賞してまいりましょう。

  根開きの大樹大地を鷲摑み

  水底に薄日の届き蘆の角

 右は自然への畏敬の念が窺える作品です。前句の「根開き」は比較的最近注目された季語です。春になると、木の根元の周りの雪が解けてドーナツ状に地面が現れます。それが「根開き」で「木の根開く」とも言います。まさに、春到来! そんな感じが雄勁な表現によって良く描かれています。「大樹」「大地」「鷲摑み」の力強い用語がそれを後押ししています。さすが!

 後句は静謐な自然界の現象を過不足なく詩に写し取っています。まだ春先の風も冷たい頃、蘆の芽はしっかり出番を待っているのでした。この生命力に乾杯!

小島 健・・・・・「跋 人生と俳句の探求」より

 

 前作に引き続き第二句集『迷路』でもNHK学園俳句講座専任講師の小島健先生にお世話になることができました。作句をする上での方向感覚を失い、糸の切れた凧のようになっていたところを、今度も小島健先生に日の射す明るい方向を示していただきました。ありがとうございました。心より感謝申し上げます。
 小島先生にいただいた「俳句力」をもって、古時計のゼンマイを今一度巻き直して、俳句の道を歩んでいこうと思っています。

四方禎治・・・・・「あとがき」より

 

○発行所

 NHK学園

 〒167-0042
 東京都国立市富士見台2-36-2
 電話 042-572-3151

◆句集『迷路』: 四方禎治(しかた・ていじ)◆

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