関西現代俳句協会

会員の著作(2019年事務局受贈分)

  句集

『定点観測―櫻まみれ―』

久保純夫

儒艮の会 2019年5月5発行



 櫻と水の関係。

 ジョン・エヴァレット・ミレイに「オフィーリア」という絵画がある。オフィーリアが、戀人であったハムレットに父を殺され、気が触れ、小川で溺れ死んでしまう、その場景。半ば水中に身を沈める彼女。?の周りにはさまざまな花。菫、刺草、罌粟、パンジー、撫子、薔薇、水仙…。そこから僕は、顔だけを水面に残し、あとのすべては櫻のはなぴらで覆われているオフィーリアを、想像する。半開きの口。虚空に向ける眼差。

 古代から、櫻はそれぞれの時代情況、像を負わされてきた。歌舞伎を典拠とする「花は桜木、人は武士」という観念。散華という語が象徴する死生観と結びついたのもそう遠い時代ではない。その意味でも、「櫻の樹の下には屍体が埋まってゐる!」という梶井基次郎の言葉にはさまざまな日本文化が凝縮されていよう。

   さまざまの事おもひ出す桜かな    芭蕉

久保純夫・・・・・「あとがき」より


○発行所

 儒艮の会

 (定価 1,000円(税込))

◆句集『定点観測―櫻まみれ』: 久保純夫(くぼ・すみお)◆

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