関西現代俳句協会

会員の著作(2018年事務局受贈分)

  句集

『流星』

松本鷹根

東京四季出版 2018年11月30日発行



  耕牛の背負ふ陽踏む陽泥の泥

田の代掻きに泥塗れに在っている牛と若き日の自分自身を重ね合わせている。「陽」は、生きていく為には無くてはならないものではあるが、時として残酷な面を持ち合わせているのではないか。「陽」がリフレインされることよって「泥」のリフレインもより効果を上げることになる。「泥」は牛にとっては宿命であり作者には青春そのものを暗示させている。

鈴鹿呂仁・・・・・「序」より


 高知から京都地方検察庁に転勤し、五年余りになったのに、職場の雰囲気に馴染めず悩んでいる時、誘われて出席した職場の俳句会で、講師の内藤十夜先生の「流星に音あり海に向くいつまでも」という句の詩情豊かな表 現に感動し、俳句により気持を安らげることができると入会したが、人事異動などによりその俳句会は一年足らずで解散になった。
 その後は、「京鹿子」に入会し十夜先生の縁故のお寺での俳句会に参加し「三十分に五句」という即吟を繰り返す厳しい指導を受けた。そして結婚し左京区北白川西町の吉田山麓に住むようになって、「京鹿子」の例会や吟行句会に参加するようになり鈴鹿野風呂先生のお供をさせていただき、時には先生のお宅で銘酒をいただきながら、社家としての鈴鹿家の歴史や、先生の句碑として残されている俳句等についてのお話を拝聴した。また勤務先が丸山海道先生のお宅に近かったことから先生宅で行なわれていた若手の句会にも参加させていただき青嶺集の巻頭作品に選ばれるなど恵まれた時を過ごした。

松本鷹根・・・・・「あとがき」より


○帯「自選十二句」より

 耕牛の背負ふ陽踏む陽泥の泥

 入日滲む魚臭摑みて蠅老ゆる

 大樹なり天近きより黄落す

 嵯峨残暑土を匂はすだけ降れり

 蹼と翅あり春を意のままに

 寄る波に返す波なし葦枯れる

 稲の花いま直立を祈りとす

 落葉道色を尽して宥し合ふ

 淡海の色を着こなし更衣

 鳥雲に涙ぐまねば雲なき日

 万緑の鐘の余韻に手を合はす

 見返りの若葉明りや閑雅仏


○発行所

 東京四季出版

 〒189-0013
 東京都東村山市栄町2-22-28

 電話 042-399-2180

 (定価 2,700円+税)

◆句集『流星』: 松本鷹根(まつもと・たかね)◆

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