関西現代俳句協会

会員の著作(2017年事務局受贈分)

  作家論

『この世佳し―桂信子の百句

宇多喜代子

ふらんす堂 2017年12月16日発行



梅林を額明るく過ぎゆけり       (昭和十四年)

昭和十三年、大阪の大手前高等女学校(現在の大手前高校)を卒業したころ、『昭和文学全集』(改造社)の「俳句篇」を読んでいて、古めかしい俳句の多い中、日野草城と山口誓子の句に目が止まった。たまたま阪急百貨店の絵画展に出かけた際に、同百貨店の一階ロビーの書籍売場に出ていた俳誌「旗艦」を手にとり、そこでかねてより俳号といささかの俳句を知っていた草城の作品を目にする。あきらかにそれまで読んできた俳句とはちがうということに惹かれ、当時の草城がどういう経緯をもっていた俳人であるのか、「旗艦」がどういう俳誌であったのか詳細も知らず、昭和十三年の暮にこれに投句を始める。
掲句は「旗艦」48号に初入選した句である。〈額明るく〉に若い女性の気持ちの明るさがうかがえる。

(裏表紙より)

  

 桂信子は、少女期に大正モダニズムの波を受けて成人し、俳句の新興を提唱した日野草城の膝下で俳句を学び、自らの俳句をつくり続けて二〇〇四年に九十年の生涯を終えた。その間、おびただしい数の句を残した。その数の内から、九十年の生涯を語るにふさわしい句を選び、いささかの事跡を付して「桂信子の百句」とした。そのため、抜粋した句は桂信子の秀句、代表句という視点からはややずれる。

宇多喜代子・・・・・「あとがき」より


○発行所

 ふらんす堂

 〒182-0002
 東京都調布市仙川町1-15-38-2F

 電話 03-3326-9061

 (定価 1,400円+税)

◆作家論『この世佳し―桂信子の百句』: 宇多喜代子(うだ・きよこ)◆

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