関西現代俳句協会

会員の著作(2016年事務局受贈分)

  句集

『俳句のアジール』

望月至高

現代企画室 2016年12月25日発行



鈴木六林男を師とする望月至高の第2句集。

  派遣労働者累累と卯の花腐しかな

  地震ないのあと子らは笑うよ春泥に

2007年以降、現在までの<時代をうたう>全282句を収録。

他に、大道寺将司句評、吉本隆明追悼、
唐牛健太郎の思い出、戦死した叔父の追憶など、
著者の精神世界の広がりを明かす文章6篇も収録。

(帯文より)

 

 第一句集を出して約一〇年が経つ。無常迅速、老境へ加速してゆくばかりであった。
 その焦燥のなかにあっても醒覚を怠り、無為徒食の日々を貪った。生活の上を流れる時間の一切が砂に埋もれ、ときどきそこから這い出てみると鈍色の空と湿気を含んだ腐臭に満ちた風が吹いているばかりであった。戦後みたこともないような異形の風景。
 辛かったのは俳句に対する自身のにべもない無関心であった。表現を文学たらしめるには、世界の総体的ヴィジョンを欠いては成り立たないという吉本隆明の言葉を信じてきたわたしとしては、思想における四〇年の空白を埋めることに必死だった。もはや俳句など悠長に作っている場合ではない、という強迫と切迫に怖気づいていたのである。

望月至高・・・・・「あとがき」より


○発行所

現代企画室

 (定価 2,000円+税)

◆句集『俳句のアジール』: 望月至高(もちづき・しこう)◆

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