関西現代俳句協会

会員の著作(2016年事務局受贈分)

  句集

『石鏃抄』

矢田 鏃

霧工房 2016年7月10日発行



絶望と祈り…
その〈ゆふまぐれ〉の片隅に
密かに立ちあがる独りの詩想
「俳句型式」に仕掛けられた光の矢だ。

――帯より


 わたくしの内なるテーマは、命の大切さ、命から萌芽する〈愛〉の切実さについて自分の文体で書き続けることだと考えています。荒廃した日本の隅っこで執拗に問い続けることです。

矢田 鏃・・・・・「あとがき」より



○帯「『石鏃抄』より」

 爆撃を語り茶碗に桃のたね

 秋深き畳の下は大地にて

 人恋はば臍のおくまで秋の声

 金閣寺まで甘露飴たづさへて

 みどりごは深層水を超ゑ寂し

 台風眼父はミシンで衣を縫ふ

 星月夜手を天秤の上に乗す

 人形よりしずかな母の咀嚼音

 酢牛蒡や一句を晒す裏の山

 頂や父は薄をめがけ駈けた

 一木の彫られすぎたる天の河

 口腔へ春の善哉失せにけり

 桜鯛静かに満ちるうしほかな

 白雲の大きな陰り女郎蜘蛛

 たまきはる命なりけり露零る


○発行所

 霧工房

 〒673-0854 兵庫県明石市東朝霧丘22-19
 電話 078-918-8789

 (定価 1,800円(税込み))

◆句集『石鏃抄』: 矢田 鏃(やだ・やじり)◆

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