関西現代俳句協会

会員の著作(2015年事務局受贈分)

  句集

『こんせんと』

寺田良治

編集工房ノア 2015年10月10発行



  左耳を知らぬ右耳山眠る
  グローブに穴あり春の息吸って

 なんともおかしい左右の耳、そしてなんともいじらしいグローブの穴。 寺田良治の俳句は、「えっ、これが俳句?」と思わせる。もちろん、そのように思わせるものこそが500年の伝統を今に活かした俳句である。作者は2001年の句集『ぷらんくとん』で宗左近俳句大賞を受けた。絶妙の諧謔を高く評価されたのだが、この『こんせんと』ではさらに諧謔の度を高めており、読者に「えっ?」を連発させるだろう。

坪内稔典・・・・・栞文より



 第一句集『ぷらんくとん』以後の作品二六一句を集めた第二句集である。その間、病気にかかったりして発表をためらっていた。
二〇〇一年頃から二〇一五年までの作品を制作年代順に四ブロックに分け、それぞれのブロックの中を四季順に並べた。ほとんどは「船団」に発表したものである。

寺田良治・・・・・「あとがき」より

○帯「自選十句」より

 はじめに言葉それから先は蝶

 空気入れ立掛けたまま桜かな

 コーラ飲むがらがら蛇のようにのむ

 長谷川君とかげのように光りなさい

 自転車のサドルが鳴けばすでに秋

 こおろぎはときどき鉄橋ときどき夕日

 障子貼るその音楽をやめなはれ

 関ヶ原以来草の実くっついて

 人参が芽を出すきのうの打ち処

 老人の乾いてしまう日向ぼこ


○発行所

 編集工房ノア

 〒531-0071
 大阪市北区中津3-17-5
 電話06-6373-3641

 (定価 2,000円+税)

◆句集『こんせんと』: 寺田良治(てらだ・りょうじ)◆

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