関西現代俳句協会

会員の著作(2015年事務局受贈分)

  句集

『時は今』

吉本伊智朗

本阿弥書店 2015年9月30日発行



伊智朗俳句の根底にあるのは
反骨の美学である。
その美学は地霊との交感を呼び、
祈りを散りばめた謙虚な風姿が美しい。

帯文より



 『和実』が最後の句集であった筈が、第九句集『時は今』を上梓できるとは思いがけない喜びである。
 集名『時は今』は、例の“時は今天が下知る五月かな”と詠んだ明智光秀の句から引用させてもらった。
 この日の句会から光秀の運命が変わったことは周知の通りであるが、彼が天王山で破れて後、その命を永らえて徳川家康を援けた天海大師となったと説があったりして、ただの悲劇の武将ではなかった。
 この光秀の城下町である亀岡を知ったのは「青」の頃からである。それから今日までこの地を踏むこと数知れずで、その風土からは限りない恩恵を授かっている。

吉本伊智朗・・・・・「あとがき」より


○帯より(はりまだいすけ抽出)

 草いきれ古本の香に似たりけり

 落鮎の空のけむりは破風を出て

 綿虫を吸ひこむほどに祈るなり

 鷹見し眼われに戻せばわれ眩し

 光秀忌なりと直立白一羽

 泪目の渇くに似たり鵙の贄

 その齢神の知らざる冬木かな

 掛鯛の藁噛む音を聞きにけり

 梅咲けり牛の乳房の色をして

 透き蚕らと天の塵降る音を聞く

 馬老いて虚空の露を舐めるなり

 人間になりすぎていま捨案山子


○発行所

 本阿弥書店

 〒101-0064
 東京都千代田区猿楽町2-1-8 三恵ビル

 電話 03-3294-7068

 (定価 2,800円+税)

◆句集『時は今』(ときはいま): 吉本伊智朗(よしもと・いちろう)◆

  吉本伊智朗氏は2015年9月6日に逝去されました。
  つつしんでご冥福をお祈り申し上げます。(関西現代俳句協会事務局)

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