関西現代俳句協会

会員の著作(2015年事務局受贈分)

  句集

『雲海』

中村光影子

風詠社 2015年7月17発行



 中村光影子さんと初めて出会ったのは、今から四十五年以上も前のことであった。師大中青塔子(後に祥生)の、秘蔵っ子的な存在の若手作家として、衆目を集めていたが、先輩ながらも気さくに会話を交わしてもらった記憶が残っている。その後、休刊中の「草炎」を、光影子、松本剛、私久行の、三人での編集部体制で復刊することになった。俳誌は順調に発刊されていたが、暫くして転勤で光影子さんは大阪へ。そして剛さんも愛知県の方へ異動となった。が、長い交友は続くこととなり、光影子さんは現在も幹部同人として、「草炎」を支えてくれている。

久行保徳・・・・・「序」より



『名は体を表す』と言う。『光影子』という俳号に私は憧れ続けていた。
 これほど詩を志す者にとってその本質を言い得ている俳号があるだろうか。
 恩師大中祥生師から賜わった号だという。
「入門当時趣味で写真撮影をしていまして、俳句も写真も『光と影』のコントラストが重要だということで命名していただきました。また当時大中先生は、青塔子と名乗っておられ、『子』をいただいた訳です。」との経緯を、光影子氏自身から聞かせて頂いた。氏はその『光影子』の俳号の下に精進して来られ、この『雲海』を上木された。

松原君代・・・・・「解説 ―光影子の名のごとく―」より



「影あってこそ形」久保田万太郎の言葉です。雅号「光影子こうえいし」は、大中祥生師が、その想いを込めて、命名していただいたと思っています。名に恥じないように歩んでこれたのだろうかと振り返りながら、自選した句集です。

中村光影子・・・・・「帯文」より


○帯「『句集 雲海』十句」より

 夜の湖目玉濡らさず泳ぐなり

 笑い合う嘘ぼうぼうと木の芽風

 崩れやすい石積む霧に目玉濡らし

 コスモス踊る踊る亡母の細い首

 眼下へたわむ雲海妻の眠り積む

 春一番嬰児渡され森ひろがる

 たましいの穴くぐりくる糸蜻蛉

 着ぶくれて杭一本を打って去る

 白帯や象は音無く首を振る

 去年今年夢のかけらを抱き越へる


○制作

 風詠社

 〒553-0001
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 電話 06-6136-8657

◆句集『雲海』: 中村光影子(なかむら・こうえいし)◆

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