関西現代俳句協会

会員の著作(2013年事務局受贈分)

  句集

『石の声』

石井冴

香天叢書 2013年9月28日発行



石井冴さんの俳句はとても軽快で、
自然界や人間世界の心を読む感覚は鋭敏だ。

  十二月みんなが通る自動ドア

この句は、第十八回西東三鬼賞を得た句で、
便利になった日常への無関心を捉えた炯眼である。
この句集を読み進んでゆくと、
作者の感覚がどのように高まって行くのかがよくわかる。
そして、声なき声、あらゆる存在に感情移入して
自らその存在となって声を発せしめるのだ。
「石の声」は地球の声であり、宇宙の声であろう。
なんと愉快な句集であるか。
作者の日ごろの行動やまなざしが見えてくる。

和田悟朗・・・・・「帯文」より


○帯「十句 和田悟朗選」より

 ふんわりと個人に戻る昼寝覚

 冬晴れの観覧車なる個室に

 籠枕近くを水の流れおり

 地球から地球の見える金魚玉

 聖五月首から垂らすホイッスル

 十二月みんなが通る自動ドア

 六林男忌の脈打っている水平線

 後ろへも流れる時間毛糸編む

 誰にも会わず光年を来て春の石

 ムカシトンボだけにささやく石の声


○発行所

 香天叢書

 (定価 2,000円)

◆句集『石の声』: 石井冴(いしい・さえ)◆

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