関西現代俳句協会

会員の著作(2013年事務局受贈分)

  句集

『みをつくし』

的場秀恭

角川書店 2013年4月25日発行



  平凡がいい幾山河秋の暮      秀恭

 生きている人間のいる場を主題にした的場さんの俳句は、詩の誘い水となる言葉を、人の世にあって当然の不本意や不如意や不実や不幸より、善の方位に向けて熟成させています。そこで生き生きしており、それゆえに読者に人間とはいいものだという懐かしさを喚起させるのでしよう。

宇多喜代子・・・・・「跋 おおらかな句境」より


 題名を決めるにあたり、少しは思い迷ったが、結局“みをつくし”に決めた。これは俳誌『獅林』に「澪標抄」(一回~百回)として作品を発表していた時の表題によるものである。現在は「早蕨抄」と題して発表しているが、まだ七十数回のため敢えて前者を選んだ。今回の“みをつくし”には双方に発表した句と俳誌『寒雷』に発表したものの中から抽出した三百九十句である。

的場秀恭・・・・・「あとがき」より


○帯「自選十二句」より

 子の部屋に子がゐる嚔して通る

 山の彼方へかなしき顔す昼寝覚

 日向ぼこ膝を叩いて終りとす

 昔話はじめるやうに春の雨

 祖父となり祖父を忘れて独楽競ふ

 春風に耳やはらかく歩きけり

 竹馬の先づ二三歩を後退る

 たてよこに寂れゆく町鳥帰る

 箱根駅伝富士はけろりと立見かな

 みな佳き名持つ新年の箸袋

 微笑みは言葉のはじめ秋桜

 望郷の視野なごませる鰯雲


○発行所

 角川書店

 〒102-8078
 東京都千代田区富士見2-13-3

 電話 03-5215-7820

 (定価 2,667円+税)

◆句集『みをつくし』: 的場秀恭(まとば・ひでやす)◆

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