関西現代俳句協会

会員の著作(2012年事務局受贈分)

    遺句集

「春をさがしに」

駒沢 木楽

私家本 2012年4月15日刊

 

亡き父は若い頃は山仕事が中心で、大型トラックで幅いっぱいの山道を運転し、まさに肉体労働者。土と樹脂と汗まみれで働いていました。CADなどない時代に夜半まで製図台に向かっていた父の姿をはっきりと覚えているのは、おそらく長子の私だけでしょう。
父と俳句の直接の出会いは、母方の祖父・北垣雅楽一(俳号 吾楽)の晩年、句会への送迎の際の初投句で入選したことです。
六〇歳で社業の一部を長男に譲ったのを機に「雁が音句会」を立ち上げました。自宅で句会を催すことは、準備をする母にとって負担が大きかったと思います。しかし、夫婦で俳句三昧の日々を送れたことは幸せでした。
二〇一一年春、病が進んだ時の
「お父さん、句集を出す気はないの?」「ワシはな、句集は要らん。けど、後で子供が作るのはええ。」というのが結果的に父娘二人の最後のまともな会話となりました。

山根 知江・・・・・「あとがき」より

○帯「わたしの選んだ父の10句」より

 木挽き唄雪が木霊を吸ひ込めり

 日曜日春をさがしに家を出る

 月明に回峰僧の白衣照り

 夕星の一つ枯野の風来坊

 抜糸して試歩は長等の桜まで

 星流る犬にこぼせしひとり言

 娘を送る飛機夏雲に消ゆるまで

 芒分け笹わけ杣の小昼かな

 風の盆あかつききざす山の影

 寄す波の汀たしかな春仕度

○発行所

 私家本

 編集兼発行者 山根知江

 〒663-8023
 兵庫県西宮市大森町1-58-605

 協力     駒沢知子

 (非売品)

◆遺句集「春をさがしに」(はるをさがしに):

駒沢 木楽(こまざわ きらく)◆