関西現代俳句協会

会員の著作(2011年事務局受贈分)

   句集

「菖蒲湯」

高木 智

東京四季出版(私家版) 2011年11月11日刊

 

私には、すでに二冊の句集があります。第一冊は、妻晶子と同時出版した『ベレー』、これは、学生時代から毎月百句ほども書き留めたものを自選し、丸山海道前師に序文をお願いしました。第二冊は『姫始』で、これは、海道選の作品を纏めました。
そこで第三句集は、その後の作品から、豊田都峰現主宰に半数ほどに厳選してもらい、このほど出版することに至りました。
第一句集の発行が、平成一年一一月一一日で、第二句集は、平成一一年一一月一一日、今回が二〇一一年一一月一一日としました。この発行日に拘るのは、母の誕生日が一九一一年一一月一一日である事に因みます。
装丁についても、私の趣味で、「袋綴じ」、「折本」、今回は「見開き(裏白)」とする事にしました。
出版に際し、多忙な都峰主宰の手を煩わせ、句集名「菖蒲湯」と序文を戴いて感謝しています。

高木 智・・・・・「第三句集について」より

高木智。本名である。本名で俳句を作るところに智俳句があると思っている。
これを言いたいのは智俳句とは、人間模様人生模様俳句だということ。生きている人間から離れたところに、智俳句の世界はないということ。
作者の繰り広げられている、人間模様人生模様。雅号的に遊び心より、真に対決する作者の立場が満喫できるに十分な作品群。ますます多彩に展開されることを、祈り願う次第である。

豊田 都峰・・・・・「序」より

○豊田都峰「序」より全二十七句

 紙魚逃げて蹴出しの綾と脛に傷

 名月やたちまち消えし母の皺

 母の紋妻に継がせて雑煮椀

 師の軸も母の遺品も雛祭

 百歳を越す母の雛美しき

 御降や父の着物の身に添ひて

 季語三つある句もゆかし水仙忌

 大居士となりて十年花洛の忌

 金婚に七年残す青嵐

 枯芝に人現れて緑生む

 雨音は傘になじみて花を観る

 梅雨島の神とて古き幣一つ

 睡蓮や遠き瞳もちて寄り添うて

 雁来紅未だ返信届かざる

 雪のひだめくられ合掌造かな

 男踊り腰でさばけり風の盆

 燈台を見おろす燕より高く

 寝返れば群雄割拠虫の闇

 どの檻も猛獣居らずわが厚着

 浮々と雁を見に行く定年後

 本願へ草の露踏み砂利を踏み

 夢二忌や恋てふ国のあるらしき

 秋燈を少し近寄せ老いにけり

 癌封じ得たりと啜る寒卵

 菖蒲湯の穂先病巣在るあたり

 菖蒲湯の穂先を胸に刺してみる

 冬至湯を両手で摑み明日を待つ

○発行所

 東京四季出版

 〒160-0001
 東京都新宿区片町1-1-402

 電話 03-3358-5860

 (私家版)

◆句集「菖蒲湯」(しょうぶゆ):高木 智(たかぎ さとし)◆