関西現代俳句協会

会員の著作(2011年事務局受贈分)

       詩集

「ことばの流れのほとり」

梶谷 忠大(俳号 予人)

竹林館 2011年10月10日刊

 

 

梶谷さんが、ひらがなの研究の集大成として「ことばの流れのほとり」を刊行してくれたことは、詩を書く者にとって大きなよろこびである。
巻頭の「すぎ まつ」に始まり、「あり」「せみ」とつづき、豊富なユーモアを交えた展開が極めておもしろい。それらは森羅万象に及び、12番の「あい…」に至っては八十五行におよぶ人間の哀感の展開となる。
さらに、人間の在り方と、梶谷さん本人の詩の研究は混在して、見事な詩作品が出来上がっている。
また、一篇一篇も短い詩篇として楽しめる。ひらがなの魅力を教えられ、たいへん勉強になる。
膨大な研究に敬意を表する。

杉山 平一・・・・・「序文」より

十年ほど前、私は俳句を始めた。毎週のように遊行と称して出歩いた。いわゆるひとり吟行である。湖北、湖東、近江中山道、若狭、吉備路、そして京北。京北町は大悲山花脊から周山までずっと上桂川に沿って周山街道が走っている。ちょうど真ん中あたりに北朝ゆかりの常照皇寺がある。周山街道を歩いていると杉の木立を抜けたり、松のある村落を抜けたりする。そんなときふと「まっすぐ すぎ。まがって まつ」ということばが浮かんできた。そしてなんども呟いてみた。
これが「ことばの流れのほとり」のきっかけである。これは感覚的なもので、語源をたどるといった論理的なものではない。ひとつだけ「あいうえお」の五段の変化と同音異義語にこだわった。そんなわけで、平仮名表記とした。旧仮名遣いにもこだわったが、現代仮名遣いのものもある。

梶谷 忠大・・・・・「あとがき」より

○「かな かなし」

 かな は かなし かな

 かな は いとし かな

 かな を かなしむ

 かなは かなしも

 

 かな かなし かな

 かな かなはぬ かなしむ

 かな かなしむ かなはぬ

 かな かはゆし かなし

 

 かなかなかな なき かなし

 かなかなかな なく かなし

 かなかなかな なき しきる かな

 かなかなかな なけ かなかなかな

 

 かなかな の なきから かなし

○発行所

 竹林館

 〒530−0044
 大阪市北区東天満2−9−4 千代田ビル東館7階 FG

 電話06−4801−6111

 (定価1500円、税別)

◆ 詩集「ことばの流れのほとり」: 梶谷 忠大(かじたに ただひろ)◆