関西現代俳句協会

会員の著作(2011年事務局受贈分)

  歌句集

「隆RYU

米岡 隆文

邑書林 2011年7月1日刊

 

たわむれに浮かんでいるのかと思う棺の中に納まれる父

さびしらに世の混沌と不条理に身を置きつつ 此岸と彼岸を隔つ川へ歌と句を意志的に投げ入れんと試みてきた作者の放つ真摯なる諧謔の新歌句集

樹や椅子の裏側にゐる季節かな

「帯文」より

○帯・五首五句

 時を切る鋏をそっと耳裏にしのばせてくる理髪店店主

 心音に潮騒もどる妻の秋

 河原町歩めばふいに暗がりより高安国世に似たる人出づ

 神は白梅全身に漲れる

 永遠に消えてしまひし片歌を恋ふるが如し冬の木洩れ陽

 夕彦の夕の字月の形せり

 やさしさのやうなるもののにじみでてゴッホの耳とまはる糸杉

 にんげんにもどるときあり夜の雛

 こんにやくは立つても曲げても笑ひますいつそちぎつてなげてぺしやくしや

 蛇縄をもて縛るべき自我の影

○発行所

 邑書林

 〒385−0007
 長野県佐久市新子田915−1

 電話0267−66−1681

 (定価2380円、税別)

◆歌句集「隆」(りゅう):米岡 隆文(よねおか たかふみ)◆