関西現代俳句協会

会員の著作(2011年事務局受贈分)

  句集

「和 実」

吉本伊智朗

本阿弥書店 2011年5月25日刊

 

本集は私の第八句集である。集名は今回も歌舞伎関連とした。「和実」とは和事(わごと)と実事(じつごと)とを折衷したような役柄だという。それがいつからか、私の内部で親しい言葉になっていったようである。自分に合った役柄ではないかとか、時には中庸を思ったりして―。そもそも俳句と歌舞伎には共通項があるといわれている。その最大のものはどんでん返しだとか。私が興味を覚えるのはこのあたりのことである。

吉本伊智朗・・・・・「あとがき」より

○帯「自選十句」

 霊長目いつぴき坐り花終る

 賭一つ卯波の夜となりにけり

 瀬の石にまぎれず河鹿煤びかり

 白眉を先立てゆけば浮巣見ゆ

 新藁を括る新藁抜き放ち

 木守にあるべし神の鷲摑み

 蓮枯れて枯れざるものを異形とす

 針のよな吻持つ魚の叫ぶ冬

 一舟をつつみて運ぶ枯野かな

 神鏡に消え入るわざをかいつぶり

○発行所

 本阿弥書店

 〒101-0064
 東京都千代田区猿楽町2-1-8 三恵ビル

 電話 03-3294-7068

 (定価2800円、税別)

◆句集「和実」(わじつ):吉本 伊智朗(よしもと いちろう)◆