関西現代俳句協会

会員の著作(2011年事務局受贈分)

      句集

「さふらんさふらん」

久保るみ子

文学の森 2011年5月2日刊

 

どの句のことばも、身内のように作者によりそい、生命を愛撫し、想いの深さをしずかに伝えてくれる。巧みな類推と、高い技法がいささかの外連も見せず、作者の吐く息吸う息のつづきのように自然に句のなかに息衝く。
<ここからは梯子が途切れ夏帽子>の哀しさが、やがて<光から生まれてきたり露の玉>の世界に包まれるように、読むものをしずかな安堵の光のなかに誘う。
『さふらんさふらん』には、久保るみ子の健やかな詩精神があふれている。

宇多喜代子・・・・・「帯文」より

<『さふらんさふらん』に収められたるみ子の俳句は、どこを切り取っても、久保るみ子が居るね。いいなぁ。>久保純夫がこんなことを言ってくれました。とても嬉しい。
夫、久保純夫へ。私の人生はあなたそのものです。

久保るみ子・・・・・「あとがき」より

○帯「久保純夫 選」十五句より

 さふらんさふらんクレオパトラの鬱を吐き

 クリムトのように抱かれ麦の秋

 皀莢のしずかに種を宿しけり

 なめくじら天才なれば戦わん

 考えていても出てくる心太

 光から生まれてきたり露の玉

 身のうちの循環小数秋櫻

 少年の素足が好きなかたつむり

 中有は帚木ばかり濡れており

 垂直に悪縁を断ち鱧の皮

 屋根ごとに違う音して薬降る

 鴛鴦の一千一夜物語

 此の世からおおむらさきを誘わん

 穏やかに祈りを重ね草石蚕かな

 天空に戻る途中や龍の玉

○発行所

 文学の森

 〒169−0075
 東京都新宿区高田馬場2−1−2
 田島ビル8階

 電話03−5292−9188

 (定価2667円、税別)

◆句集 「さふらんさふらん」 : 久保るみ子 (くぼ るみこ)◆