関西現代俳句協会

■2023年11月 青年部 招待作品

背のひろく/内野義悠








 背のひろく

 内野 義悠




花おぼろ魚拓の口のぬぼと開く


洗体の泡のさみしく涅槃西風


蜘蛛の昼消毒液の生ぬるし


遠雷や熟れすぎし実へ沈む指


小瑠璃飛ぶ敬語のほぐれゆくときを


新涼や離陸を仰ぐ背のひろく


眠るには心音近すぎる無月


プルタブに爪の欠けたる夜学かな


初時雨くちびる薄くうすく剥く


着岸のタイヤの揺らぎ十二月



◇「背のひろく」:内野義悠(うちの・ぎゆう)
1988年生まれ 埼玉県在住
所属団体:「炎環」「豆の木」

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