関西現代俳句協会

■2023年1月 青年部 招待作品

ひとりの帰宅/及川真梨子








 ひとりの帰宅

 及川真梨子




全天の雲を動かす寒鴉


木枯しがインコに繰り返されている


淡雪の誘いかねている食事


身の内に寒昴あり明滅す


狐火の列を出られぬまま帰る


永遠に吠える剥製雪の夜も


冬眠の洞を塞いでから呼吸


ぴちぴちの心臓の音山眠る


地底湖に水落ちる音冬の月


冬籠一人一人に異国あり


◇「ひとりの帰宅」:及川真梨子(おいかわ・まりこ)
1990年生まれ 岩手県在住
所属団体:「小熊座」

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