関西現代俳句協会

■2022年3月 青年部 招待作品

波紋/加藤右馬








 波紋

 加藤 右馬




日脚伸ぶオフィスの窓の十七時


蛇穴を出でて渋谷のがらんどう


菜の花や雲に抜かれぬやうに漕ぐ


筑豊のへそ干草の匂ふ駅


雪渓のじんわり墨絵めく夕べ


初恋は蛇の卵の為す波紋


かねたたき夢の扉の遠ちと近ち


秋刀魚焼く言はずにおいた過去のこと


冬の陽を溜めて黒曜石は闇


何枚も栞を挟む去年今年


◇「波紋」:加藤右馬(かとう・ゆうま)
1990年生まれ 東京都在住
所属団体:「山河」

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