関西現代俳句協会

■2019年3月 青年部 招待作品

歩幅/森本直樹








 歩幅

 森本 直樹




窓の辺の日向に火事の匂ひたる


綿虫を払ひたちまち見失ふ


冬の雲ほどの歩幅を思ひけり


短日や肉塊に降る塩の粒


栞紐にくぼむページや冬夕焼


一月の舌先にガム押し伸ばす


春待つやシンクに捨つる卵の殻


鍵穴の鍵に傷つく余寒かな


春昼のビニルをやぶる指の腹


亀鳴くや肩の小雨の馴染みゆく


◇「歩幅」:森本直樹(もりもと・なおき)
1994年生まれ 京都府在住
所属団体:俳句「屍派」/短歌「未来」「恣意舞裏威頭」「too late」

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