関西現代俳句協会

■2013年12月 青年部俳句作品

東遷抄/堺谷真人








東遷抄

堺谷真人



新涼の辞令一葉虚空より


青北風や充棟の古書売りこかす


人生の荷を減らしたる西鶴忌


金輪際あはぬ帰燕と定めけり


暇乞ふ産土神や草紅葉


鰯雲まつさらな地図ひろげたる


わたましや木犀の香に迎へられ


開梱のよもすがら聞く野分かな


旧居はや売れてしまひぬ秋刀魚焼く


関帝廟前の女に夜の桃


(注)八月中瀚、転勤の命を受く。豈図らんや、齢、知命にして江都に赴き、
   職を大廈高楼の中に奉ぜんとは。乃ち倉皇として家財を梱包し、十月七
   日を以て横浜の寓居に移徙す。既に東遷するの後、熟々身辺日常の 物象
   を察するに、万事、旧に異なれり。幾ど輪廻転生せるが如し。 私かに感
   慨を禁ずる能はざる所以なり。

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