関西現代俳句協会

■2016年4月 青年部連載エッセイ

てにを、はっ。(2)
季語に勝手に句読点を入れる会

橋本小たか


 誰もが一度はやってみたことがあるに違いない。

 単語に勝手に句読点を入れてみる遊び。

 「季語に勝手に句読点を入れる会」はその名の通り、季語に句読点を入れてみる会だ。ことのついでに濁点その他も入れている。
 以下はその活動報告である。

<一月>

ぐわんてう【元朝】→ぐ、わんてう

唐の詩人の名のようになった。

とそ【屠蘇】→ど、ぞ。

お誘いの感じが高まった。

はがため【歯固め】→はが、ため。

何か非常に大事なことを突きつけられている感じが出た。

きりざんせう【切山椒】→きり・ざん、せう?

三角眼鏡をしたマダム感が出た。

しだ【羊歯】→し、だ。

結果的に「おきてにそむく者には…」のつづきになった。

はるぎ【春着】→ばるぎ

強くなった。

おりぞめ【織初】→おりぞ、め。

くやしい感じと哲学感が出た。仲間に以下のもの有り。ぬひぞ、め。うりぞ、め。かひぞ、め。すきぞ、め。

はつかがみ【初鏡】→は、つかがみ

音読しにくくなった。

さんかんしをん【三寒四温】→さ。んか。んし。をん。

音読しにくくなった。

ゆき【雪】→ゆ。き。

雪の形状が見える化された。

スキー→ス。キ。ー 

雪の形状が見える化された。が、「ー」の読み方が分らなくなった。

<二月>

いそかまど【磯竈】→いそか、まど

人名に近づいた。

<三月>

へびあなをいづ【蛇穴を出づ】→へ・びあな・をいづ

呪文に近づいた。HE-VIANA-OIZ。

やまわらふ【山笑ふ】→や、まわらふ。

とても音読しにくくなった。

みづぬるむ【水温む】→み、づぬ、るむ 

わいせつな感じが出た。

つばき【椿】→っつばき

落ちる感じから、飛び散る感じに変った。

<四月>

チューリップ→チュ、ーリ、ップ

またも「ー」の読み方が分らなくなった。「ップ」の読み方も人まかせに。

スヰートピー→スヰ~トピ~

松田聖子のニュアンスが出た。

とりのす【鳥の巣】→トリノス

SFチックになった。同じ仲間に、フルスがある。

からすのす【鴉の巣】→カ・ラスノス

オペラ用語の匂いが出た。同じ仲間に、チ・ドリノス、ヒ・バリノスがある。

てふ【蝶】→ってっふ

躍動感がプラスされた。

こんにやくうう【蒟蒻植う】→こんにや、くうう。

別の日本語になりそうで、ならなかった。

やままゆ【山繭】→や、ままゆ

音読しやすくなった。

はぎわかば【萩若葉】→はぎわ、かば。

納得しづらくなった。仲間に、くさわ、かば。むぐらわ、かば。けしわ、かば。きくわ、かば有り。

しやくなげ【石楠花】→シヤクナ、ゲー。

ロックンロールの命が宿った。

<五月>

セル→セ? ル!

思ったほど、おもしろくならなかった。

ネル→ネ? ル!

思ったほど、おもしろくならなかった。

<六月>

だいだいのはな【橙の花】→だいだ、いのはな

うまくまとまった。

さみだれ【五月雨】→さみだれ

さ、みだれ。さみ、だれ。さみだ、れ。どこに点をつけてもさほど違和感がなかった。

げぢげぢ【蚰蜒】→げぢ@げぢ

ちょっとだけ、かわいくなった。

げぢげぢ【蚰蜒】→げぢ≠げぢ

ちょっとだけ、哲学的になった。

はあり【羽蟻】→ハアリ?

パードン? みたいになった。

ががんぼ→が・がんぼっ!

陽気な笑顔が見えてきた。

みなみ【南風】→みなみ…

「タッチ」(あだち充)の感じが出た。というか、出した。

なつざぶとん【夏座布団】→なつ、ざぶ

海岸に寄せる白波のニュアンスが出た。

とういす【籐椅子】→とぅいす

春日の勢いが出た。

 もう、飽きてきましたか? ここからやっと後半です。

<七月>

きんぎよも【金魚藻】→き、んぎよも

そこは中国由来の魚、血筋が出た。

どよううなぎ【土用鰻】→どようう、なぎ

重く、けだるくなった。

<八月>

すずりあらひ【硯洗ひ】→す・ずりあらひ

洗い方が激しくなった。

つくつくぼふし【法師蝉】→つ・くつくぼ・ふし

ごつごつした。

いなづま【稲妻】→まづない

逆から読んでみた。安心感が出た。

しらぬひ【不知火】→ひぬらし

逆から読んでみた。違う味が出た。

<九月>

うすばかげろふ→うすばか・げろふ

一度は思ったこと、ないですか。

はげいとう【葉鶏頭】→はげ・いとう

一度は思ったこと、ないですか。

かひわりな【貝割菜】→なりわひか

逆から読んでみた。職を問われた。

<十月>

かかし【案山子】→かがし、

生まれたての「けだし」みたいになった。

ざくろ【石榴】→ザ・クロ

言い切った。

えびすかう【夷講】→エ・ビスカウ

素敵な外国語になった。翻訳すれば恐らく「さあ、行こうぜ!」。

ざぼん【朱欒】→さほん

やや、すっきりした。

<十一月>

しちごさん【七五三】しち‐ご‐さん

フォーメーション感が出た。実は漢字のほうが出る。七‐五‐三。

いてふおちば【銀杏落葉】→いてふおちば、

先につづく気が出た。仲間に、「かきおちば、」がある。

<十二月>

ふゆがすみ【冬霞】→ふゆが、すみ。

ちょっと切なくなった。

たどん【炭団】→TADON?

強引に、今風感を出してみた。

ストーヴ→スートーヴ

熱くなさそうになった。且つ夢のなかの故郷に近づいた。遠縁に、スーチーム、ペーチーカ、コーターツ有り。

くさめ【嚔】→QSAME
みづばな【水洟】→MIZ-VANA

TADON?の調子でやってみた。

ふところで【懐手】→ふ。ところで

元のことばと、わりあい合った。

うひよう【雨氷】・むひよう【霧氷】→うひよう=むひよう

コンビ名に近づいた。あるいは、同じものに見えてきた。

みそかそば【晦日蕎麦】→みそかそ、ば。

もしも君が心無いあれこれを言われたならば、だ。

 以上をもって報告を終る。

参考文献『新歳時記 増訂版』(高浜虚子・三省堂)

  

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橋本小たか(はしもと・こたか)◆

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