◎は特選 |
【6点句】 |
36 箱詰めのおしゃべり好きなプチトマト 横田明美 |
選 |
◎冨田潤・◎宮武孝幸・山﨑篤・こにし桃・久保純夫・森本突張 |
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ユニークな俳味。(冨田潤) |
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箱に並んだプチトマトをおしゃべり好きなトマトと表現したことによって瑞々しい新鮮さが実に美味そうです。(宮武孝幸) |
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真っ赤なミニトマトの一つひとつに顔が見えて来ておしゃべり好きと捉えたところが良い。(山﨑篤) |
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瑞々しい鮮やかなプチトマトが箱詰めにされている様子が想像出来る。(こにし桃) |
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プチトマトが性・齢を超えて、可愛くみえてくる。(久保純夫) |
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はちきれんばかりのプチトマトを見ていると何かおしゃべり好きな乙女達が浮かんできそうだ。(森本突張) |
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40 踏切の音の先まで田水張る こにし桃 |
選 |
◎山﨑篤・星野早苗・冨田潤・森谷一成・谷川すみれ・西谷剛周 |
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踏切の音の先までと表現したところが良い。線路で田が分断されているが、踏切の向こうも代田が広がっているのだろう。(山﨑篤) |
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田中の踏切音を遮るものはない。どこまでも広がっていくその「音の先まで」田水が張られている。聴覚が視覚に転換し、広々とした水田風景が眼前する魅力的な句だと思う。(星野早苗) |
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中七に共感。(冨田潤) |
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線路沿いの田んぼが鮮やかに詠み込まれている。「音の先まで」の表現が上手いと思った。(森谷一成) |
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踏切の音が田んぼの向こうから聞こえてくるということだろうか。「先まで」が少しわかりにくいが、広々とした風景が描かれていて爽やかな生命感がある。(谷川すみれ) |
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踏切の音の先まで という把握がいい(西谷剛周) |
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12 直線の愛曲線の恋蛍 西田唯士 |
選 |
こにし桃・久保彩・森谷一成・宮武孝幸・樽谷寛子・池田奈加
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対比が非常に上手い(こにし桃) |
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そんな記憶もあるなぁ、と共感。(久保彩) |
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愛と恋との差異、直線と曲線を逆さまに当てはめても成り立つ人間の性。いずれにせよ蛍が引く光のように儚い。(森谷一成) |
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愛は直線、恋は曲線とは、言えて妙です。
納得しました。(宮武孝幸) |
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愛と恋が直線と曲線の表現が面白い(樽谷寛子) |
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ふらふら、ふわふわと飛んでいる蛍の動きがを曲線と表現しているところに恋の淡さも相まってロマンがあると感じました。直線の愛の行方が気になる句。(池田奈加) |
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【5点句】 |
37 鰻めしゆるく年功序列して 野住朋可 |
選 |
◎久保純夫・星野早苗・髙木泰夫・ふもと・岡村知昭 |
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時代にそぐわない序列が、みんなで鰻を食べる際にも、ゆるくではありながら、出てくる。(久保純夫) |
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団体客が入店し、年長者から席に着いたので、その席順がなんとなく年功序列を感じさせたのだろう。「ゆるく」は年功序列の発見を曖昧にしてしまっているが、鰻屋の雰囲気はよく出ていると思った。(星野早苗) |
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飯の上に姿どうりだんだん細くなっている。それを年功序列とは何となく可笑しい。サラリーマン生活の悲哀みたいな・・・。然し今どきそんな会社は長く持たない。(髙木泰夫) |
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いわゆる上座・下座のようなマナーが、普段あまり意識していないような環境、関係性にあったとしても「鰻めし」を食べるような場面では、ゆるくだけれど、実践されている。という観察を「年功序列して」と動名詞化した仕方で云い留めている。お座敷での会食を想像しました。(ふもと) |
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「ゆるく年功序列」がうまい。気にしなくてもいいとわかっていても、相手が年上だとなんか遠慮気味になってしまう様子が見える。鰻めしも「お先に」と譲っていそう。(岡村知昭) |
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33 真っ直ぐに伸びたつもりの茄子です 髙木泰夫 |
選 |
◎池田奈加・宮武孝幸・西田唯士・西谷剛周・野住朋可
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茄子の意思に反して曲がってしまった様子が愛おしい。農家さんの写真に添えてあってもいいくらい、夏野菜のみずみずしさを感じる句でした。(池田奈加) |
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つもりは時々誤算を生みます。
ビジネスマン時代は、はず、だいたい、つもりは禁句でした。茄子でよかったです。(宮武孝幸) |
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蓮は胡瓜ほど曲がらない。それでも外的な要因(水・肥料・日射不足)等により弾けたり曲がったりする。すべてに愛を。(西田唯士) |
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茄子の微妙な曲り具合がいい。人間にも通じるなあ(西谷剛周) |
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つもりというのがよくわかる。私もよくしたつもりになる。(野住朋可) |
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27 毛虫焼く写経の反故に封じ込め 西田唯士 |
選 |
久保純夫・髙木泰夫・赤窄 結・野住朋可・横田明美 |
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一見、残忍と思える行為にも、写経の恩恵があるのだろうか。(久保純夫) |
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焼くに事欠いて、写経の反古とはショック。殺生を戒める教えに敢えて逆らう。心を浄めたつもりの作業に偽善でも感じ取っているのだろか。炎の横に捩じり花が咲いている。(髙木泰夫) |
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写経の反故に包む気持ちがよく分かる(赤窄結) |
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ちょっと弔いの気持ちも。(野住朋可) |
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仏の前での殺生。写経の反故の中で毛虫も本望かも。(横田明美) |
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【4点句】 |
28 バナナ剥くフェリーの窓の丸き角 野住朋可 |
選 |
◎こにし桃・◎髙木泰夫・◎久留島元・岡村知昭 |
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船旅の客室。景色を眺める丸い船窓の角が丸いと言う。のんびりとは違う、少し刺激的な旅の予感がした。(こにし桃) |
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比較的短い船旅か?丸窓から見える景色にゆったりと見入っている。船旅の解放感が伝わって来る。バナナを食べ終えたら、甲板に出て、潮風に吹かれるか。(髙木泰夫) |
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のんびりバナナを食べ、窓の外を眺める優雅な船の旅(久留島元) |
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「フェリーの窓の丸い角」と細部まで書き込んだことで一句の力強さが増した。バナナ剥く姿との取り合わせで、船旅の楽しさと心細さが映し出されている。(岡村知昭) |
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【3点句】 |
24 山神のメールを運ぶ鬼やんま 西谷剛周 |
選 |
冨田 潤・樽谷寛子・池田奈加 |
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詩的感性。(冨田潤) |
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リズムが良い(樽谷寛子) |
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「山神」「鬼やんま」と日本昔話のような風情の中でメールという現代には当たり前のものが、不確かな存在のようになっていておもしろいと思いました。(池田奈加) |
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35 悪食のたましいいくつ夏至夕べ 久保純夫 |
選 |
森本突張・久留島元・ふもと |
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いかものぐいの魂は色が濃くなるのかな。(森本突張) |
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わかりにくいが、夏至を人魂が飛び交うような異界の景(久留島元) |
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「夏至夕べ」という時間に、なるほど、悪食のたましいについて述べるのにぴったりではなかろうかと思わされます。こういう感想も見越しているのでしょうけれど、悪食でない魂を持つ人は幸いである、とちょっと云ってみたくもなります。(ふもと) |
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【2点句】 |
23 炎天や地球の余命考える 山﨑 篤 |
選 |
◎杉森大介・◎森本突張 |
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炎天に地球の危機を感じる暑さの句。(杉森大介) |
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悪食の限りを尽くした結果から、全地球を覆い尽くした
人新世をどう剥がしていくのかが急務だ。(森本突張) |
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5 定位置はあなたの左若葉風 こにし桃 |
選 |
◎西田唯士・久保 彩 |
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従順だから主客を右に置いているとは限らない。現在の世の中、右、総代は常に叩かれている。ならば、一歩退いて満を持すのは賢者だ。若葉風が好い。(西田唯士) |
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私の定位置は右だなぁ、と思った。(久保彩) |
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16 時間など村には要らぬ梅莚 冨田 潤 |
選 |
◎樽谷寛子・西田唯士 |
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季語が効いている。村民の悠々自適な姿が浮かんできました。(樽谷寛子) |
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漬梅は必ず夜干しをする。隠遁生活には何世代も続いてきた原風景が共感できる。(西田唯士) |
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22 サイダーや君との会話躓きて 杉森大介 |
選 |
◎森谷一成・谷川すみれ |
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初デートの緊張による「躓き」、青春の一コマがサイダーの表象によって浮かび上がる。(森谷一成) |
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恋人同士の会話だろうか、会話が止まった空白にサイダーの泡が浮き上がってくる。まるで二人の沈黙の言葉のようだ。泡がはじけたらまた会話も始まるだろう。(谷川すみれ) |
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38 いますぐの遷都のなくて蟇蛙 岡村知昭 |
選 |
◎野住朋可・赤窄 結 |
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いますぐにはないけど、昔もこれからも遷都の可能性が微かにある。季語があっていると思う。(野住朋可) |
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鳴き声のんびりしていますものね(赤窄結) |
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【1点句】 |
1 ありふれた私に朱いさくらんぼ 森谷一成 |
選 |
◎赤窄 結 |
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「ありふれた私」にさくらんぼが、それでもあなたは特別と言ってくれてるよう(赤窄結) |
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7 ヤマモモノ下オクレタラアカンベイ 樽谷寛子 |
選 |
◎岡村知昭 |
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カタカナの連なりがもたらすリズムが心地いい。「アカンベイ」には相手への親愛が感じられて心地いい。すがすがしさと心地よさで楽しめる一句。(岡村知昭) |
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9 いつか流されてみたい花ユッカ 森谷一成 |
選 |
◎横田明美 |
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誰にもある流されるままに生きてみたいという願望。
ユッカの花との取り合わせが微妙で、何故か納得できる。(横田明美) |
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20 畦草も青田も風もすくすくと 山﨑 篤 |
選 |
◎星野早苗 |
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畦草は雑草だが、青田の稲と共にすくすくと育っている。そこに吹く風も草や稲と共に丈を伸ばしたと見たところが面白い。視覚的にも納得が行き、もの皆育つ季節がユーモラスに描けている。(星野早苗) |
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31 葛桜ぷるるん君の笑うたび 横田明美 |
選 |
◎久保 彩 |
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この恋人のことを思うと、気持ちが明るくなる。(久保彩) |
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32 黒南風や胸の黒子は北斗星 森本突張 |
選 |
◎谷川すみれ |
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古来航海の指針としたという北斗星。梅雨とパンデミックが重なるこの時期に親譲りの黒子を見ることで前に進んでいこうとする作者の姿勢に共感する。(谷川すみれ) |
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41 かすれ鳴る妣の風鈴天昏れず 樽谷寛子 |
選 |
◎ふもと |
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「昏れず」とはいうもののおそらく日は傾いている時分で、この時刻に「妣」にまつわる気分が託されているのではないかと感じます。鉄の風鈴を思いました。(ふもと) |
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42 国中を漂うている黴女 久保純夫 |
選 |
◎西谷剛周 |
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コロナ禍を、黴女が漂っているとは巧い表現。黴男ではだめだなあ。(西谷剛周) |
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19 昼下がりの白黒映画百合の花 赤窄 結 |
選 |
横田明美 |
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古き良き時代の白黒映画。「百合の花」も現代人より昔の人の好む花かと。白黒映画にマッチしている。(横田明美) |
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21 もつれつつ日の高みへと梅雨の蝶 谷川すみれ |
選 |
杉森大介 |
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蝶が睦まじく宙へ登ってゆく様。(杉森大介) |
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34 電卓を叩く音止む蝉時雨 池田奈加 |
選 |
杉森大介 |
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熱心に電卓を叩いていて 打ち終わった途端に蟬時雨が聴こえて来た様。(杉森大介) |
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39 一仕事終えて茶粥や早苗月 冨田 潤 |
選 |
山﨑 篤 |
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夜明け早々に一仕事すませてきた。朝食は消化の良い茶粥をさらさらとかき込んで、また農作業へと。(山﨑篤) |
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44 茄子並べこの茄子野郎とか言わない 髙木泰夫 |
選 |
久留島元 |
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学校の先生がふざける子どもを注意しているような楽しい句(久留島元) |
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