関西現代俳句協会

「京都吟行リモート句会」披講

(2020年11月1日更新)

7点句】【6点句】【5点句】【4点句】【3点句】【2点句】【1点句

 は特選、は宇多喜代子氏の次点句選
【7点句】
17 柿落葉一枚で足る嵯峨便り   髙木泰夫
八王寺宇保・秋本哲・木村オサム・稲野一美・
赤窄結・けーい〇・赤野四羽
  柿落葉で秋の落柿舎を連想させることに成功(八王寺宇保)
  一枚の葉だけで語る京都の初冬。余分な修飾は不要と言いたいのだろうか、作者の主張が心地よい。(秋本哲)
京都の友人から送られてきた封筒の中には紅葉した柿落葉が一枚入ったきり。今年も晩秋の嵯峨野へ旅立ちます。(木村オサム)
落柿舎とその周辺の秋の風情を、まさに柿落葉一枚で表している。(稲野一美)
句の手紙と同様にこの句にも説明は不要。簡潔で美しい。(赤窄結)
京都嵯峨野のイメージを一発で伝えるような季語で本当にそれだけで十分だなと感じました。(けーい〇)
柿落葉の色彩の玄妙さは、むしろ一枚の方がよくわかる。着眼点がよく、ちょっとしたキャッチコピーにも使えそうな上手い句だと思う。(赤野四羽)
31 秋風や出町柳のおにぎり屋   野住朋可
山﨑篤・杉森大介・西谷剛周・宮武孝幸・
植田かつじ・吉村紀代子・宇多喜代子
  この店のおにぎりは役者さんへの差し入れに使われるのでしょう。常連さんで経営が成り立っている店。そろそろ新米が出始めているのでしょう。(山﨑篤)
  秋風と出町柳の地名、そしておにぎりが楽しくさせてくれる句。(杉森大介)
  下鴨神社などの女子一人旅お勧めのスポット出町柳。グルメの店がいっぱいある中でのおにぎり屋の選択に惹かれた。(西谷剛周)
  新米のにぎり飯美味そうだ。おにぎり屋は出町柳が似合う。(宮武孝幸)
  ごく少数しか知らない店。懐かしくてツボにハマった。(植田かつじ)
  出町柳から電車に乗るとき つい 買って行こうかと思う美味しい おにぎり屋さんがあって(吉村紀代子)
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【6点句】
77 立ち飲みは六角下ルぐじのあら   植田かつじ
茉莉花・西谷剛周・吉村紀代子・
西谷稔子・秋本哲・北村武衛門
  六角がウイスキーの角瓶かな?と思ったが、「下ル」で地名と分かり地元感が深い。又、京都の冬は、冷え込むので「ぐじのあら」の吸い物が温かいくて美味しい。(茉莉花)
  六角下ルから京都の立ち飲み屋を連想させ、ぐじ(甘鯛)のあらなんて京都らしい肴に、呑み助の拘りを感じる。ぜひ一緒に呑みたいものだ。(西谷剛周)
京都ならの言い方の「ぐじ」が効いていて六角下ルも雰囲気の佳い場所の設定と思いました(吉村紀代子)
  土しょうがで、甘辛く煮た甘鯛の匂いが漂ってくる。男性はこの匂いで、ちょつと一杯です。(西谷稔子)
  立ち飲みと「ぐじのあら」が近い気もするし、ぐじと表現する時点で京都といえることから、六角という地名とかぶる気もする。それらを差し引いても冬の立ち飲み屋の景が鮮やか過ぎるほど伝わってくる。(秋本哲)
流行りの角打ちバル。六角が角打ちに響く。ぐじのあらが俳味豊かな句となっていると思う。(北村武衛門)
64 月ノ出ルアッチガマンガミュージアム  塩見恵介
村上春美・金山桜子・十河智・
小西瞬夏・北村武衛門・久留島元
  そぞろ歩きカタカナに振り回される楽しさ(村上春美)
  月とマンガミュージアムの出会いが新鮮。カタカナ表記が外国人のつぶやきのようで面白い。(金山桜子)
月、出、のみが漢字。季がきっちりとわかる俳句の基本を踏まえながら、あとのすべてをカタカナで。アニメ、漫画を愛して来日する外国人が多い、そんな外国の人が、歩きながら呟いている。または、案内人となっている日本人のことばかも。(十河智)
  マンガの中でも、「のらくろ」など、昔のものを思わせる。そんなマンガの歴史を片仮名表記がうまく醸し出している。軽い書き方もニュアンスを作っている。(小西瞬夏)
  漫画ミュージアムのある御池通りは東西に走る広い道で、東山からすっくと上がる月が楽しめるポイントです。月をめで左を振り向くとそこは面白いミュージアム。カタカナ表記がマンガっぽくて良いと思いました。(北村武衛門)
カタカナのインパクトと、そっけないようなあどけないような口調が面白い(久留島元)
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【5点句】
53 こほろぎの見つめる気配仏彫る   木村オサム
冨田潤・足立陽子・横田明美・
植田かつじ・髙橋卯三
俳味ゆたか。(冨田潤)
日常の良い句です。(足立陽子)
読み手が蟋蟀になって、仏師の緊張と息づかいを見ているよう!(横田明美)
京都の吟行で仏師を題材にしたのは秀逸(植田かつじ)
趣味で彫っている仏像、夜遅くまで続けて、最後の仕上げだ。こほろぎの声が遠くからきこえる。(髙橋卯三)
21 団栗の見える洛中洛外図   木村オサム
金澤ひろあき・野住朋可・金山桜子・
赤野四羽・宇多喜代子
人物や建物を細かく描きこむ「洛中洛外図」。華やかな都に生きているよろこび、エネルギーに満ちている。ささやかな団栗もその一員かと思うと楽しい。(金澤ひろあき)
賑やかで金ピカの洛中洛外図に、素朴なドングリが見えるというのが面白い。ずっと見てしまいそう。(野住朋可)
豪華絢爛な屏風絵に団栗が描かれているというのが面白い。(金山桜子)
洛中洛外図はいくつも知られているが、どれも大振りで都の景観や生活の様子を生き生きと描いている。団栗がみえる作品があるのか知らないが、ディテールを摑んだ画家の目のすごさを感じさせる。(赤野四羽)
7 化野へ風に乗り継ぐ夕蜻蛉    小松しま 
森本突張・久保純夫・南方日午・
冨田潤・谷口道子
蜻蛉が己の死に場所を求め化野へ風を読み継ぎ向かっている、何かお遍路さんに通じる死出の旅を連想させてくれる句。(森本突張)
虫たちがある人の魂、化身であるのは実感することです。京の人びとの埋葬地のひとつであった、化野へ。「乗り継ぐ」が見事です。(久保純夫)
昼間ちょっと下界へ降りてきた魂が、化野念仏寺へ蜻蛉にのって帰っていくような景を感じた。(南方日午)
  中七が効いている。(冨田潤) 
「乗り継ぐ」がとんぼの飛ぶさまを見事に表現している(谷口道子)
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【4点句】
62 化野へ木の橋わたる秋の蝶    小松しま 
塩見恵介・宇多喜代子・横田明美・松田牧子
京都吟行なので佳句が多い中できるだけ地名があるか、その地をよく見せる句を選びました。その中でも化野という場の雰囲気と秋の蝶の取り合わせのこの句はしっとり魅力的。特に木の橋をゆらゆら秋蝶に飛ばせた構図が見事でした。(塩見恵介)
秋蝶はゆらめきながら木の橋を渡り、あの世へと消えてゆく。幻を見ているようだ。(横田明美)
上質な抒情。化野への深い思いをさわやかに表現。(松田牧子)
45 噂からかすかな波紋うろこ雲   西谷稔子
久留島元・髙橋卯三・金山桜子・金澤ひろあき
噂、波紋、うろこ雲とイメージがひろがっていくのがおもしろい。「かすかな」は気になった。(久留島元)
今日は何もかも微かで穏やか、うろこ雲の波紋の様。(髙橋卯三)
京都人の気質(?)を詠みこまれた視点や大きく広がる鱗雲と噂話のかすかな波紋との取り合わせがうまいと思いました。(金山桜子)
   噂から噂が小さな波紋を呼び、それが空一面うろこ雲のように広がって行く。イメージ化が絶妙。(金澤ひろあき)
79 町筋の上ガル下ガルを秋の風   髙木泰夫
谷口道子・村上春美・片岡宏子・宇多喜代子
京都の街の特徴的呼称「上がる、下がる」が上手に据えられている(谷口道子)
京都の上ガル下ガルをうまく使う(村上春美)
京都で住所を聞くのはとても難しい。縁者を訪ねた時が甦った。(片岡宏子)
63 豆餅を食うて左京はしぐれかな   南方日午
塩見恵介・久保純夫・中田剛・赤窄結
あ、ふたばだ!と思って、思わずいただきました。隣の岡田商店のコロッケもおいしいですね!個人的にはしぐれの肌寒さならコロッケ一択かな(笑)。豆餅なら天候は嘘でも晴れていてほしく、鴨川で食べたい吟行ですね!(塩見恵介)
京都という像のひとつの典型ではないでしょうか。(久保純夫)
野沢凡兆の「下京や」が念頭にあったか。時雨と言えば本来は京(とりわけ北山時雨)の時雨。「左京」の時雨もよろし。(中田剛)
  豆餅と時雨の取り合わせが絶妙だと思った。(赤窄結)
68 七転び八起きの朝の九条葱    松田牧子
冨田潤・村上春美・小松しま・植田かつじ
九条葱への空間の妙。(冨田潤)
七八九の数並び(村上春美)
葱苗を少し傾けて植えると、まっすぐになろうとして、美しく育つとか。(小松しま)
  良くぞ見つけた、七八九。(植田かつじ)
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【3点句】
11 やはらかく沈めるナイフ夜の桃   横田明美
久保彩・宮武孝幸・杉森大介
不安感がゆっくり身体のなかに沈んでいくようです(久保彩)
メタリックなナイフと夜の桃の取り合わせに冷たさと円熟したエロティシズムがある。(宮武孝幸)
沈めるナイフが桃の柔らかさをよく表現している句。(杉森大介)
48 鯖街道是従リ洛中猫じゃらし   塩見恵介
髙木泰夫・赤窄結・稲野一美
街道で見かけた石の道標であろう。「是従り」という古めかしい文字もいささか、風雨に晒され読みずらいかもしれない。(髙木泰夫)
洛中と洛外からの往来の度に猫じゃらし揺れる様が浮かぶ。鯖と猫の組み合わせが面白い。(赤窄結)
鯖街道から洛中に入る石碑か。周囲は鴨川デルタだろう、猫じゃらしがよく似合う。(稲野一美)
6 化野の万の石仏星月夜    西谷剛周
十河智・神田和子・小松しま
化野の夜の天地が、果てしなく広がり、星の光で浄化されている。石仏が動き出し、踊りだすような気持ちにもなる。(十河智)
母が亡くなってからは石仏や羅漢がよく目につきます。夜空の無数の星が化野の万の石仏を見守っているように感じました。(神田和子)
満天の下、誰彼に似ている石仏。景色がみえてくる。(小松しま)
24 猫じゃらし都に先の大戦   久留島元
赤野四羽・八王寺宇保・木村オサム
京都で「先の戦」といえば応仁の乱、という話がある。大戦といった場合もそうなのか知らないが、そんな人間を飄々と見つめるかのような猫じゃらし、雑草や動物の生命の率直さが輝いてみえる。(赤野四羽)
応仁の乱が京都の語り草であることと季語のイメージがピッタリ(八王寺宇保)
数年前に、名前は知っているが中身は意外と知られていない応仁の乱のことがミニブームになりました。とにかく戦の動機や経緯や勝敗がややこしくて、よくわからない戦だったようです。だらだらと続き、京の都を疲弊させた戦であったことだけはわかりました。猫じゃらしが、昔そんな戦に弄ばれた人々がいた事をふっと連想させてくれたのです。(木村オサム)
70 京都駅コートの君が降りて来る  植田かつじ
西谷稔子・横田明美・松田牧子
この句のコートは道行コートだろう、しずしずと降りてくる。流石に京都駅ですね(西谷稔子)
君を見つけた「僕」の心のときめき!京都駅から恋の物語が始まる。(横田明美)
友人か恋人か、秘かな胸のたかまり。情景を素直に表現して、ムダが無い。(松田牧子)
37 梁太き町家のフレンチ宵の秋   稲野一美
西谷剛周・金澤ひろあき・宇多喜代子
京都の町屋を活かしたフレンチレストラン。吹き抜けの煤こけた太い梁がアクセント。開店直後の店の様子が描かれている。(西谷剛周)
町屋の持つ独特の陰翳が見え方に奥行きを持たせる。本来「明」の文化にあるフレンチが逆に生かされるという逆説的本当がよい。(金澤ひろあき)
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【2点句】
3 鶏頭を辿ってゆきし中有かな   久保純夫
小西瞬夏・森本突張
「中有」という言葉は古都京都になじむ。次の生を受けるまでのぼんやりとした時間は、鶏頭を辿ってゆくことが必要なのだと思わせる。意外な世界観が表現されている。(小西瞬夏)
魂は魂なりに帯化した鶏頭を目処に浄土を目指すのか。虚に満ちた作品。(森本突張)
16 えび芋や三和土を仕切る竃神   冨田潤
小松しま・稲野一美
京の名物料理「芋棒」湯気の向こうの割烹着が目に浮かぶ。(小松しま)
町家の少し冷えた三和土と竈に、京野菜のえび芋が調和している。(稲野一美)
22 秋声を蹴り上げ西京極の声   杉森大介
南方日午・髙木泰夫
秋の声を蹴り上げられるってどういうこと?と思ったら、次の西京極という言葉で、サッカーの試合が行われているんだという景がひろがり、その後の声で、静かな世界に歓声がわーっと立ち上がり、秋の声が聞こえなくなるのを感じた。西京極を他の競技場の言葉でも成立しそうなのだが、西京極という言葉に含まれる多層的な意味が、秋声という響きに呼応しているように思う。(南方日午)
サッカーの試合だろうか。喚声が聞こえる。どちらかと言うと、京都はしっとりとしたイメージを抱きがちだがそんな事はない。先端企業も多いし、若者も多い。(髙木泰夫)
39 赤文字の躍る立て看銀杏降る   赤窄結
山﨑篤・宮武孝幸
以前、京都大学の立看板の撤去で一悶着がありましたが今は落ち着いたのでしょうか。赤文字の躍るという表現に惹かれました。懐かしいです。(山﨑篤)
学生運動の激しかった時代のエネルギーはどこに行ったのだろうか。(宮武孝幸)
56 鞍馬山幾度も崩れまた野分   十河智
宇多喜代子・秋本哲
歴史の中で幾度も大変な目に遇った鞍馬山、また天災で幾度も崩れた鞍馬山に「また野分」と荷を負わせたところ、面白い句です。(宇多喜代子)
野分以外の理由でも何度か崩れてきたであろう鞍馬山。牛若丸を思い浮かべながら、その歴史の積み重なりを楽しめる一句である。(秋本哲)
75 落柿舎は小さき庵秋高し    八王寺宇保
北村武衛門・足立陽子
昨年訪れた落柿舎の前は捨畑が花野と化していました。この畑越しに見る落柿舎はまさに小さく低くて空が大きく見えます。天高しの季語が嵌った一句。(北村武衛門)
これでよいと思います(足立陽子)
1 渡り鳥立て看板の背の高く   野住朋可
十河智・片岡宏子
京都郊外広い視野の広がりのあるところ、渡り鳥が目に入る。京都ではどんな鄙びた道にも案外背の高い目立つ縦看板がある。上を見上げる者にとっても、もしかして渡る鳥にとっても障害になっているやもしれぬと思う。(十河智)
京都の駅に降り立つとすぐ看板が目に入る。都をとりまく連山の深山を感じた。(片岡宏子)
9 きのこ重なる道長の屋敷跡     金山桜子
佐々木紺・宇多喜代子
まず、きのこが重なるイメージがかわいらしくてよい。年余を経たというのが他の言葉で表現されていたら取らなかったと思います。(佐々木紺)
14 原稿用紙に月光詰まる嵯峨の宿   小西瞬夏
森本突張・佐々木紺
月の光が原稿用紙を満たしたなか、いま自分はなにをしたためようとしているのか手に付かないでいる、嵯峨の宿での情景が浮かんで来る。(森本突張)
月光が溜まる、のではなく詰まるというのが良くて、マス目の一つ一つに月光が吸収されているようで面白いです。(佐々木紺)
42 おかっぱの列をなしゆく曼珠沙華  久保純夫
久保彩・村上和巳
奇妙な光景に惹かれました(久保彩)
懐かしい光景だ。(村上和巳)
52 裸電球錦市場のマスク勢     谷口道子
野住朋可・吉村紀代子
狭くて、圧迫感のある天井の錦市場の雰囲気が思い出された。(野住朋可)
錦の通りの裸電球や 今現代のマスク姿の定番がぴったりで吟行俳句ですねえ(吉村紀代子)
65 脇に抱く女結びの残り菊     片岡宏子
山﨑篤・西谷稔子
嵯峨野から京の町家に菊を売りに来ているのでしょう。京都らしい風情です。残り菊が良いですね。(山﨑篤)
京の路地を歩く景がみえてくる。(西谷稔子)
67 満月や天動説を疑わず      宮武孝幸
足立陽子・宇多喜代子
はつきりした句です。(足立陽子)
69 京ことば車内に聴いて山紅葉   茉莉花
村上和巳・宇多喜代子
やわらかい本心でない京都ことばをひさしぶりて゜聞いてみたいねえ(村上和巳)
78 林檎剥くパティシェ路地の町家カフェ 稲野一美
久保彩・髙木泰夫
新しい京都のかたちがあります(久保彩)
さっぱりとしているが、趣味の良い、カフェの情景が浮かぶ。路地の店と言えど、若い経営者の意欲が滲み出ているようで明るい。(髙木泰夫)
82 法堂の鳴龍の眼や秋気澄む     北村武衛門
木村オサム・宇多喜代子
大徳寺の天井の龍の絵は、敷瓦の上で手を叩くと、龍が鳴いたように堂内に音が響くことから鳴き龍と言われているそうです。秋の法堂内は、ぴりっとした空気が漂い、まさに秋気澄むという季語がぴったりですね。(木村オサム)
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【1点句】
8 秋灯宿の名浮かぶ京の路地     赤窄結
片岡宏子
京都らしい佇まい想像した。が今年はコロナ渦である。が人々の賑わいを連想し、老舗の格調と威厳も・・・。(片岡宏子)
20 御所の月雲に七彩ありにけり   金山桜子
中田剛
御所から見上げた夜空に、月のひかりを受けた雲が広がり流れてゆく光景がしっかりとイメージされてくる。(中田剛)
26 新幹線顔十五種や京うらら     村上春美
村上和巳
新幹線の顔は段々と間延びし十五種もあるのかな昔昔父の買い出しにつきあって何度か逢坂山トンネルを蒸気機関車で通り大津では全身真っ黒の人を見たね。(村上和巳)
30 色ながら散るまつ白な祇王の死   小西瞬夏
佐々木紺
色づきながら散る紅葉と、美しいまま老いず死ぬ祇王のイメージが重ねられ、素晴らしい句になっていると思います。(佐々木紺)
33 碩学は深煎り好む暮の秋     赤野四羽
久保純夫
碩学とは誰を指すのか。「京都学派」など思い浮かべ、その人の好みはやはり深煎りの珈琲だったのか、と納得してしまいます。(久保純夫)
46 夜久野ケ原残る火口に草茂る    足立陽子
杉森大介
夜久野の京都府唯一の火口。そこに草が生えている。地元民としては嬉しい句。(杉森大介)
51 底冷ゆる奥行長き京の家     村上春美
けーい〇
古い京都の町家の暗い感じの廊下を思い浮かべると底冷という季語が余計に感じられるような気がしました。絶妙な取り合わせの一句だと思います。(けーい〇)
58 哲学の道で秋思はやはり嘘     冨田潤
松田牧子
季語を否定的に取り合わせたのが秀逸。したたかな俳味。(松田牧子)
74 石榴持つブラック・ライブズ・マターかな 久保彩
髙橋卯三
柘榴の割れ目からあふれてくる目に見えないものの一つにB・L・M(髙橋卯三)
81 稲光り龍はつぶやく京の古寺     髙橋卯三
神田和子
妙心寺の天井に描かれた龍が浮かびました。何をつぶやいたのか、色々想像でき面白いと思いました。(神田和子)
44 秋暑し鈍器の凹みつややかに   佐々木紺
宇多喜代子
12 一夜にて色置く紅葉嵐山    茉莉花
神田和子
昨日まではそれほど赤くなっていなかったのに、翌朝の嵐山は見事な紅葉で、その景に感じ入っているのよく伝わってきます。(神田和子)
15 御家元都のへそに菊薫る    金澤ひろあき
茉莉花
御家元だから華道などである。その家元が都のへそ(真ん中)にあり、まさに今を盛りと菊が薫っている。又は、都のへその御所=菊が薫るのか?興味深く読めた。(茉莉花)
23 北白川柿の上枝(ほつえ)へ再配達 吉村紀代子
塩見恵介
特選にした句と負けず劣らず、地名の強さ以外にも、上枝など語彙の豊富さが見事。北白川の閑かな町の空気の中の再配達というちょっとした日常がドラマチックに見えます。渡辺水巴の「どこまで登る郵便夫」の句が少し匂いますが、木守柿にも見える上枝の柿の色に京都市街の北部らしさが集約されています。(塩見恵介)
25 幕末の墓濃く淡く杜鵑草     秋本哲
宇多喜代子
28 台風が来ると軒端の早終い    山﨑篤
谷口道子
軒端で小さな商いをしているのは、いかにも京都らしく、懐かしく、風景がよみがえってきた(谷口道子)
41 善哉や東司の先の秋海棠     森本突張 
中田剛
「東司」だから禅寺のたたずまいがイメージされる。禅寺で味わう秋の風情。旅人は汁粉でほっこり。(中田剛)
43 路の音の紅葉しぐれとなる鞍馬    杉森大介
八王寺宇保
鞍馬山中の深秋の閑さを巧みに表現(八王寺宇保)
47 ねむい午後バスから彼岸花が見え   久留島元
野住朋可
京都市といえば市営バス。地元の人だけが知っている彼岸花スポットの隣を過ぎることもあるのかも。(野住朋可)
59 詩集閉づ銀漢の尾に鳴るハープ   横田明美
けーい〇
銀漢の尾に鳴るハーブという比喩が天の川の中心から外れた部分の薄くなっていく様子を見事に表現していると思います。(けーい〇)
72 牛祭見知らぬ神の面薄し     赤野四羽
茉莉花
広隆寺の祭り。摩多羅神の白紙の仮面を被り異様な服装で牛に乗って寺内を一巡し、国家安泰・悪病退散等の祭文を読む。地域観があり、早くコロナ退散を願いたい。(茉莉花)
73 新涼や舞子習いの束ね髪     片岡宏子
南方日午
とてもすがすがしい句でした。束ね髪とあるので、うなじに涼やかな風が吹き抜ける景も感じた。秋は温習会や祇園おどりなどもあるので、その稽古なのかな?とも想像させる。(南方日午)
76 生きるのも死ぬのも大事柿を食う  宮武孝幸
小西瞬夏
上五中七はやや饒舌であるが、「柿を食う」で生活感、リアリティがしっかり感じられ力強い。(小西瞬夏)
80 秋の蚊に残されている詩人かな   久保彩
久留島元
ちょっと人から浮いている詩人の景(久留島元)
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 【無点句】

  2 紅葉且つ散る京都嵐山線終点  けーい〇

  4 鳥辺野は鳥のまなこの露の玉  中田剛

  5 とことはの円周率に野霧立つ  佐々木紺

 10 濁り酒頭のほろ苦き雀焼く   西谷剛周

 13 鴨川の鴉陣取る薄紅葉    松田牧子

 15 御家元都のへそに菊薫る    金澤ひろあき

 18 終バスや吾と満月乗せて発つ  西谷稔子

 19 金閣の澄む池雪ののぼりくだり 村上和巳

 27 御所の秋カラス若くて突きあふ 中田剛

 29 時は今三日天下のひがん花   金澤ひろあき

 32 柴栗や応仁の乱の古戦場    足立陽子

 34 レンタルの着物でぶらり薄紅葉 山﨑篤

 35 川霧や雲中菩薩舞ふ古刹    北村武衛門

 36 秋の香の溢れあふるる錦市場(にしき)かな 谷口道子

 38 荒海や皿の華やぐ間人がに   南方日午

 40 秋雨や世界遺産の佇まい    神田和子

 49 渡月橋はさみて秋の虹淡し   けーい〇

 50 円山のしだれ桜は天女なり   村上和巳

 54 萍の紅葉そよげり大覚寺    八王寺宇保

 55 秋雨や芭蕉も踏みし石畳    神田和子

 57 女子大へ続く坂道夜這星    秋本哲

 60 かがよへる空のおはじき走り星 森本突張

 61 橋の上秋風匂う京五条     髙橋卯三

 66 哲学路さくらもみぢの落差かな 吉村紀代子

 71 紅葉狩ゴーツー京都に乗せられやうか  十河智


▶▶「京都吟行リモート句会」清記

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