2019年6月30日 早苗田句会 吟行記録 例年になく遅い梅雨入りとなったばかりの、雨こそ降っていないもののいささか雲行きの怪しい中、法隆寺駅南口に集合した。 参加費と引き換えに短冊2枚を受け取り、締切時間が告げられる。 小屋主御自慢の石窯は農小屋の外のテラス席にしつらえられており、少し小やみになっていた雨の中、石窯の前のテーブル席では、手際よくピザがこねられ、名代の鯛の塩釜が焼かれる順番を待っていた。 宴のメインイベントは、鏡割りならぬ鯛の塩釜割である。当日の参加者32名が分散して座っている3ケ所の島でそれぞれ割られ、ますます宴会気分が高まる中、いつの間にやら手元に当日の清記が配布されてきた。 得点の集計も済み、西谷剛周企画部長の司会による高得点句からの合評に移る中、ますます喧騒が高まってきたと思ったのは錯覚で、雨脚の激しさに農小屋の窓の外が真っ白となるまで、本降りの雨が農小屋を打ち付けていた。 (記録担当・蔵田ひろし) 早苗田吟行句会 参加者出句 千年のひめみこもいる青田かな 久保 純夫 早苗田の曲りは主のおおらかさ 西谷 剛周 農小屋の戸は大開き植田風 横田 明美 雨蛙お前も一句詠まないか 宮武 孝幸 頬撫でる重たき風や梅雨曇り 吉田 星子 軽トラの梅雨の真中をかけ抜ける 和田 Y子 このピンク毒ですタニシ増殖中 桂 凛火 早苗田をつっきり都会行き列車 赤窄 結 ここはもう宇宙の真中冷し酒 金山 桜子 塩鯛を割れば潮の香大南風 星野 早苗 信号の遠き点滅植田風 外山 安龍 半夏生の花農小屋に生けられて 川嶋 義治 黒南風や土蜘蛛の末裔酒を盛る 中村 聰一 子燕へ覆を開くベビーカー 蔵田ひろし 蝙蝠傘横顔へたどりつけぬ 小西 瞬夏 万緑の奈良に潜むか雨男 西村 操 梅雨空の声集まりぬ法隆寺 久保 あや 燻製に縄文の香や青田風 志村 宣子 ブルーベリーと鯛の塩釜黒光り 曾根 毅 斑鳩の里にぎやかに夏の雨 樋本 和恵 借景の五重の塔の荒梅雨や 榎本 祐子 遊水地二十町歩の青田風 遊田久美子 疲れたる右脳を満たす早苗風 北村 峰月 塩鯛の黒こげとなる白十字 山ア 篤 豊かなる斑鳩の風合歓開く 中村 純代 立ち食いの蚊に食われたる太い脛 片岡 宏子 ケリの声燻製の窯香り出す 衣笠 宏子 寝違いの首伸ばすとき行々子 木 泰夫 捨て苗や虫魚の世界娑婆世界 橋 卯三 塩釜の塩きらめいて若葉雨 藤田 亜未 幼子に合わせ夏蝶低く飛ぶ 上島 義輝 ピザ匂ふナポリの知らぬ蝸牛 西谷 稔子 ■吟行句会の模様 |