関西現代俳句協会

関西現代俳句協会第7回定例句会開催

 

 第7回定例句会は、平成30年6月30日(土)午後1時よりヴィアーレ大阪に於いて開催した。参加者は55名であった。
 全員が当季雑詠を3句出句、会員は3句選、6名の選者は10句選とした。
 なお選者は高橋将夫氏、谷下一玄氏、久保純夫氏、花谷清氏、西谷剛周氏、吉田成子氏にお願いした。  

 参加者全員の作品3句を掲載します。(50音別)

ふらここを降り鞦韆の揺れ止まず    遊田久美子
更衣して戦争の近づけり
沖縄忌海青すぎる空も又

夏至の真夜醒めし不覚の重さかな    石井 和子
初蝉や友の決めたる樹木葬
地の起伏辿りし青嶺墓標とす

蛍の宿先ず確かむる非常口       上田千恵子
冷房車かばんに探す羽織り物
太鼓橋夏百日の一歩かな

ティーカップ玻璃の向かうの造り滝   上野乃武彌
凌霄花やストロベリームーンの宵
亜麻色の髪の白シャツサキソフォン

晩年や蟻を危める心あり        上藤おさむ
笑劇の役者笑はぬ薄暑かな
緑陰に義足立て掛け微睡める

青蔦や団結力の恐ろしさ        江島 照美
実像と虚像の力草いきれ
手と足の爪の競演夏来る

アメンボー水面をすべる足六ツ     小川 桂子
強風や身を寄せ子らの夏木立
ででむしや鬼子母神に寄り添ひて

麦わら帽似合う静かな目の男      音羽 和俊
蚊帳仕舞うのは母出して来るのは父
蝉のよく来る枝ぶりの立派な樹

遠目きく人ほうたるを数へ出す     勝又千恵子
茅の輪くぐり8の字とも無限大とも
御袋の端居や戸袋のあたり

鰻熱鰹節を躍らせる          葛城 裸時
夏大根神経活動野菜汁
暇そうに滝は早く忙しい

雲の峰別々に老い双生児        河口久美子
晴れ男と野球観戦梅雨最中
玄関の大きな蜘蛛の囲蜘蛛居らず

いやいやを覚えたる子に梅雨の星    川﨑 奈美
利かぬ気の顔は二番子軒つばめ 
母の手の糠床の茄子掴みだす

蛸の足買うて半夏の終の家       北村 峰月
夏座敷槍の由来をまた聞きぬ
復元へ須恵器より漏る半夏水

骨壺を紫陽花たちが囲んでいる     木野 俊子
戦前へ鉄棒が削られて夏至 
雨の手に小さき記憶ほととぎす

食べるかと腋より出だす鱧の皮     久保 純夫
全身が沸き立っているなめくじら
帚木に水上りゆく眩暈かな

心太道中半ば押し出され        熊川 暁子
とかげ出て石垣あつくなりにけり
レギュラーになれぬ部員よ浮いてこい

木下闇仏は石に還りけり        桑田 和子
画仙紙のにじみ具合や走り梅雨
水馬に踏んばる力飛ぶ力

蜻蛉生まる明日の透ける翅震え     佐藤 俊
糸電話の妣に繋がる蛍の夜
我が腕に銀の毛生える夏の月

母の膝子等の取り合う地蔵盆      志村 宜子 
掛軸の川の行方や鮎料理
紅落とし昭和の顔の夕涼み

人力車人待ち顔の梅雨菌        翠 雲母
軍神の父の命日水葵
ボート漕ぐ父の夢だった正露丸

富士山を踏み台にして雲の峰      高橋 将夫
涼しげな笑顔に嘘はなかりけり
天心に洗ひたてなる梅雨の月

北斉の波大観の松夏旺ん        高畑美江子
老鶯に追われくらがり峠越え
群青の沖近づけて梅雨晴間

合歓の花閉ずほど雨の降りに降り    谷下 一玄
新緑の揺れをり水を画布として
白地着て卒寿に馴れて来たりけり

紫陽花やシーボルトの子イネのこと   田宮 尚樹
流木の角のとれたる皐月波
正面に神の見てゐる茅の輪かな

青嵐六臂如意輪立つ構え        千原 恭子
海開き足踏むように足洗う
汗かかぬロボットに腕掴まれし

炎立つゴッホのひまわり夏帽子     永田 悠
ジュニアの句飛び出す誌面虹の橋
古民家の甕のうしろの守宮かな

節太の庭師の指や夏来る        永田 良子
夏の夜の話たくみに笑わせて
足場とれ新たな息吹夏木立

結葉や法螺一山に鳴り渡る       中俣 博
母のネルの単衣の柄のシャツに映ゆ
脚気診る医師のハンマー新しき

人間の匂ひ消えたる冷房車       中村 治美
少年に小さき後悔ソーダ水
あの時のハンカチ返しそびれたる

田鰻を梅雨の鴉が引き合えり      西谷 剛周
水中花いらぬ男を消しに行く
いきさつを聞けば蟇にも三分の理

病院の七夕竹や願ひ書く        野村 朴人
良きことの続く病院青あらし
聞きたるはあの世の声か昼寝覚

傾きしままの天秤旱梅雨        花谷 清
岩に映え水音に映え花菖蒲
黒揚羽ひとつの線を舐め尽くす

ブーイングまだ鳴りやまぬ熱帯夜    樋本 和恵
老鶯やスローライブでまいろうか
月涼し水の形の京干菓子

遠花火父の記憶は肩車         福嶋 雄山
黒揚羽よぎりて此処は神の域
終戦日母の記憶は今年なく

干魚の口焼け焦げて敗戦忌       堀竹 善子
あの世にも雨降りますか蟇
いつせいに棚田を下りる青田風

石庭の石それぞれに梅雨じめり     松島 圭伍
白雨くる船それぞれの面構へ
せせらぎに木の香風の香てんと虫

夕焼の空より雨戸降ろしけり      松村 世子
高見山の削りて小さし梅を干す
母恋えば宇治の蛍に招かるる

今日ひと日竹婦人にも世話になり    三宅 侃
緑陰も仏も拝み札所寺
油虫君らも地震の怖かりしか

養ひて律義な金魚となりにけり     宮武 悦子
炎昼や涼しき顔の仏たち
老鶯の今朝も元気とホーホケキョ

尺蠖の立ち上がりたる大欠伸      宮武 孝幸
下を向くロダンは無口梅雨湿り
ときどきハグ夏半分の孤独なり

山開き陸に上がって五億年       村上 和巳
昭和ひたむき平成下向き梅雨電車
朧月いっしょに過ごした二万日

夕立の児やおら水筒らっぱ飲み     村上 春美
さくらんぼくるくるテレビ猛らせて
月涼しアール・ヌーボーの外蛇口

大夕焼母の駅へと折り返す       村田あを衣
梅雨旱まだ潤ってゐる右脳
短夜の夢は源氏へ託す文

戻り梅雨いつまで続く兜太ロス     森 一心
噴水は平和のしるしマーライオン
負けてなほ生き残る運梅雨上がる

妖精になれぬ乙女らビアホール     森 とよ子
春愁をちょっぴり残し夏を追う
七夕の願いは三ついちにいさん

短夜の輪郭爆ぜていく若さ       柳川 晋
詩も歌も風も死にては新生す
常闇の涯てなる麻の葉波かな

桐の花いつしか消えし適齢期      山浦 純
日傘なる母の若さもセピア色
立葵地震知らぬげに咲くばかり

前略またお邪魔しますと燕来る     山崎よしひろ
蛇穴を出ず一悶着ありそうな
落し文はせをは忍者という噂

ボールペンシャーペン動かぬ蝸牛    養学登志子
美味しいというわけでもなしどくだみ茶
裏面とは言わずB面干鰈

AIが句を詠むなんてところてん     横田 明美
サマードレス両肩出してみたものの
サッカー観戦漢はまこと暑くるしい

滝おちるあの勢いで病去れ       吉川貴美子
ぶらんこや宇宙旅行の夢のせて
なんとなく死のことよぎる団扇風

草深き庭に人声夏至夕べ        吉田 成子
計算苦手方向音痴雲の峰
蟇考へ深き声漏らす

潤すは器官の遊び場山開き       吉村紀代子
狂ふなら今だと囃す夜の金魚
留守ですと電子に言はせする昼寝

集合も解散も笛夏木立         和田 燁子
水中花話するにも一人の旅
その中の一際目立つ白菖蒲

 (以  上)

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