関西現代俳句協会

第42回句集祭&平成29年度忘年会

 日 時 : 平成29年12月2日(土)15時10分~19時30分
 会 場 : ヴィアーレ大阪

 写真集はこちらをご覧下さい。

  

句集祭

 船場小学校の跡地に建てられたホテル「ヴィアーレ大阪」で、風もない穏やかな小春日の中、今年度の句集祭は予定通り催行された。

 3階の華の間で行われた理事会に引き続き、2階のエメラルドルームで行われた句集祭も、上藤おさむ事務局長の司会で、冒頭に本年の物故者への黙祷から始まった。

 吉田成子会長の挨拶
「今年は現代俳句協会の70周年の節目であり、先日東京で800余名の参加で記念大会が催された。70年というのは戦後の日本の歴史と重なる。発足以来諸先輩方が発展させてきたこの会を受け継ぎ、現在の会員が歴史を重ねてゆく使命を担っていることを心に留め、これからも前進して行く。
 句集祭は関西だけの催しで、今年度お祝いの対象となったのは17冊、1人で複数だされている方もあり、著作者の人数は15名で、本日はその内12名にご出席いただいている。こういう形でお祝いすることで、1人でも多くの人が句集を出すはずみになることを願っている」

 10点の句集と7点の句文集等、合計17点の披露と句集代表句の披講は、音羽和俊理事が行った。

 昨年同様着流しの福嶋雄山氏が、西川吉弘企画部長による紹介で、登壇されて心なしか上気されつつ挨拶される著作者のスナップを撮影されてゆき、弥が上にも気運は盛り上がってゆく。

 伊丹三樹彦顧問はご欠席ながらもお手紙を寄せられ、西川吉弘企画部長がそのお手紙を代読した。
 以下欠席者を除いて登壇された著作者の方の挨拶を、順番に紹介する。

 ① 岡田耕治氏
「師匠である鈴木六林男氏は句会が終わると深夜まで呑んでいたそうだが、私が花曜の担当のあたりからあまり呑まれることはなく、難波の古書店の天地書房や、新刊ならばジュンク堂に本を観に行かれていた。その天地書房は串カツ屋に、ジュンク堂はドンキホーテになっている」

 ② 小崎愛子氏
「高齢化、人口減少が進み、猪の数がいまや人口より多い但馬よりきた。未熟者で力不足ではあるが、ご拝読下さい。過疎地ではあるが、海や山もあり、松葉ガニが美味しい季節であり、是非とも但馬に足を運んでいただきたい」

 ③ 木村和也氏
「俳句は『水』をテーマにしたものが多い。『水』を偏愛の対象としており、これからも作ってゆく。船団の会で日野草城ノートを連載しており、先日大阪俳句史研究会でも発表の場があった。書き継いでゆくので、ぜひ読んでほしい」

 ④ 久保純夫理事
「句集タイトルの四照花とは山法師の別名である。家を建てたときにシンボリックツリーとして、オリーブと山法師を植えた。鈴木六林男氏に師事する前の初学の頃、山口草堂氏門下の川口芳雨氏に種を捲いてもらったのが実を結んでいると思っている」

 ⑤ 後藤博幸氏
「自費出版の第二句集である。どうしても上手くなれないから開き直って俳句を愉しもうと、友人の版画家の大場冨生氏(トミオ・オーヴァ氏)と共同して一冊の作品を作るに至った。これからもⅢ、Ⅳと続けて出してゆきたい」

 ⑥ 高橋将夫副会長
「気が付いたら六冊目である。句集名の由来となった句は<田一枚知り尽くさんと蜷の道>である。蜷がいるその田1枚の外には、別の田んぼがある。俳句の世界でも同様に、私の知らない俳句の世界があるのではという思いを、その句に重ねている」

 ⑦ 外山安龍理事
「始めの句が<ゆきあひの空へふはりと草枕>で、最後の句が<晩夏光さよならよりもありがたう>となっており、季節はまた始めの句につながってゆく。ゆきあいという夏と秋の中間でどちらともつかない、はっきりとしない移ろいゆく情感が好きである」

 ⑧ 中永公子氏
「俳句は20歳頃から始め、現代美術の方と共著で『受胎告知』という本をだしたり、映像とのコラボなどを行なってきた。俳句と他のジャンルと出会って出来た作品を纏めるつもりで出版した」との挨拶に続いて、自作の俳句を数点朗読された。

 ⑨ 西谷剛周理事
「昨年の句集祭で宣言した通り、今年出版した。2冊目の句集である。1生に1度は句集を出したいとよく聞くが、1度ではなく何度も出して、その度に自分の未熟さを実感するのが、俳句の上達方法ではないだろうか」

 ⑩ 本郷公子氏
「娘に続いて主人を亡くし、息子との2人きりの生活となり、その子育ても終わった時に京鹿子とのご縁が出来、3代にわたる主宰の指導を得ることが出来た。この1冊を宝物としてこれから暮らしてゆく」

 ⑪ 本多通博氏
「平成14年に退職し、当時住んでいた神奈川県の相模原市で山元志津香氏の八千草俳句会にお世話になったが、その後和歌山に転居して、平成23年から放送大学に俳句会が出来、古梅敏彦理事に師事している」

 ⑫ 望月至高氏
「第2句集で、俳句と文章が半分づつくらいで、世評では俳句の人ではなく、評論の人といわれている。取り上げてもらった句は、『六曜』のメンバーで獄中病死した大道寺将司氏が爆破し損ねた東北本線の荒川橋梁を詠んだもの。一介の物書きとしてお付き合いください」

続いて、上藤おさむ事務局長から句集祭に先立って行われた理事会の各議題の報告がおこなわれた。(内容別記)

 最後に、花谷清副会長より
「この十数年出席させてもらっている。著書にあとがきという形で記載されていることが、この句集祭の皆さんのご挨拶でヴィヴィッドに伝わってきて、1冊1冊の背景、著作者のその歩みが確認できる。この度の御出版おめでとうございます」との閉会の挨拶が述べられ、定刻より少し早く終了した。

懇親会スケッチ

 今年度より青年部主体の運営で行なうとのことで、予定より30分程早く、午後5時に隣接のクリスタルリームで、久留島元青年部長の司会により懇親会がスタートした。

 鈴鹿呂仁副会長からの

「今日の皆さんのお話を聞いて、それぞれの句集に対する想いをつくづく感じ、感銘を受けた。久保純夫理事の台所俳句を目指すというお話も面白かったし、伊丹三樹彦顧問のお手紙で97才になられたというのはびっくりした。私事ではあるが、私の叔母は107歳まで生きて、99才の時には白寿という句集も出している。そのことを思えばまだまだ先は長く、それまで句集祭りは安泰である」

との開宴の挨拶に続き、高橋将夫副会長から乾杯の発声があり、宇多喜代子特別顧問から

「句集を出すというのは大事で、一人が出すのは大変である。著作者のお一人お一人の想いが生で聞けるというのがこの句集祭の醍醐味と思う。今後ますます立派な会になることを願っている」

との挨拶があり、和やかに宴席がスタートした。

 次々とだされる料理の合間を縫って、司会者の指名により、次の方々の挨拶が行われた。

  尾崎青磁副会長
  森一心理事
  大谷茂樹理事
  熊川暁子理事
  杉浦圭祐氏
  平田繭子理事
  中井不二男理事
  とよた澪氏
  藤井なお子氏

 に続いて檀上で今年句集を出された方揃っての記念撮影が行なわれた後に、若森京子副会長からの 「また齢を一つ重ねて来年の句集祭でお会いしましょう」との閉会の辞を以って開宴した。

 <記・蔵田ひろし>


第42回「句集祭」参加作品一覧
1
自叙伝『わが心の自叙伝』
伊丹三樹彦
2
メモリーフォト&ハイクコレクション『俳句愛のわが友垣』
伊丹三樹彦
3
句集『日脚』 岡田 耕治 
飛んで来て今こおろぎの形なす
4
俳句とエッセー『水の容(かたち)』 木村 和也 
遠火事を見ている耳の大きな子
5
句集『四照花亭日乗』 久保 純夫 
割れてからかたちを想う胡桃かな
6
句集『砂時計』 古座岩康子 
梅は実に刹那を流す砂時計
7
随想句集『つれづれ 第二集』 小崎 愛子 
佳句いまだ得ず飴色の煮大根
8
句集『なまけもののつぶやきⅡ』 後藤 博幸 
桜鯛来世はやはり桜鯛
9
句集『蜷の道』 高橋 将夫 
言霊に玉虫ついてをりにけり
10
句集『ゆきあひ』 外山 安龍 
大冬木互ひの空を争はず
11
句文集『星辰図ゆるやかなれば』  中永 公子 
星辰図ゆるやかなれば旅に出る
12
句集『人間賛歌』 西谷 剛周 
天空に人住む街の鰯雲
13
句集『游庵』文集『敬天』 藤川 游子 
秋霖のなか敗北の碑を建てる
14
句歌集『某氏の書斎』 本郷 公子・本郷 義武 
丸窓の某氏の書斎みむらさき
15
句集『雲の峰』 本多 通博 
揺蕩ふて命を孵す春の海
16
句集『俳句のアジール』 望月 至高 
秋風のあれが鉄橋爆破未遂