関西現代俳句協会

関西現代俳句協会第6回定例句会開催

 

 平成29年9月30日(土)午後1時よりヴィアーレ大阪に於いて第6回の定例句会を開催した。参加者は事務局五名を含め38名であった。
 当季雑詠句を各自3句提出。会員は3句選・選者は10句選をお願いした。因みに選者は関西現代俳句協会の選者で谷下一玄・西谷剛周・花谷 清・的場秀恭・吉田成子各氏の5名であった。
 尚第7回は平成30年6月30日(土)にヴィアーレ大阪で開催する。

 

 参加者全員の作品を開催いたします。(50音別)

   野茨の実に落日の華やげり       石井 和子
   木の実降る道繋ぎゆく下校かな
   草の絮光集めて海へ出る

   となりの嬰抱き上げ秋を折り返す    井上菜摘子
   串おでん表通りを来し人と
   ゆきずりの鏡に老いて秋の蝶

   ちちろ虫夜目に向いの窓あかり     上田千恵子
   名月を見たい見えない籠の鳥
   地球儀のほどよく止まる宵の秋

   秋日和数多へチューブ受け入れて    上野乃武彌
   ポケットに夢とガムあり鰯雲
   秋深し話相手のいなき日日

   純粋に生きるは難し新走り       上藤おさむ
   菊人形今にも動きさうな指
   遅刻して小さく坐る夜学生

   逆走をするかも知れず秋の暮      音羽 和俊
   雨の夜の男は無口きりぎりす
   秋風の手にする源氏物語

   秋の蝶柱にしっかりなりました     葛城 羅時
   光り始めスマホ世界の桃の実
   秋曇炎の帯を待ちのぞむ

   美しき言葉使ひや身にぞ入む      河口久美子
   初物に言霊称へ秋彼岸
   月光に合わせ鏡や我が余生

   草の露終生母は帯しめて        川﨑 奈美
   長兄に短き便り虫の夜
   長き夜や単三電池とり換へる

   戒壇を出で炎上の曼珠沙華       北村 峰月
   石塊を積まば鎮魂嶽秋意
   小謡の律の調や竹生島

   死はいつも隣合せに秋の暮       桑田 和子
   秋の蝶自分の影を追い越せず
   一日を影に寄り添う秋遍路

   よく伸びて風をとり合ふ秋桜      谷下 一玄
   予習鳴き復習鳴きの法師蝉
   火取虫死ぬかも知れぬ灯を選りに

   山桃匂うよ大道芸の玉簾        樽谷 寛子
   天魚とは都はとはと噛み締める
   芦繁茂飛び立つ鳥の声つぶれ

   松茸に思い上りし値札かな       千原 恭子
   藻の上を水のすべりし村祭
   いち早く秋の棲みたる空家かな

   夕映えの煙ひとすじ落し水       永田  悠
   車椅子の子の打つ太鼓敬老会
   虫の音の主役の代わる午前二時

   鰯雲鍾乳洞の小さき魚         永田 良子
   応援旗バシバシ振るや運動会
   実演の粔籹温温秋彼岸

   曼珠紗華に昂奮したかヘルペスめ    中俣  博
   身に沁むや鰐の食事は週一度
   机上一冊二冊三冊十月号

   老いてなほ記憶の底を手繰る秋     中道  勇
   ひたすらに稲穂の垂れて重み増す
   干稲の匂誘ふ瑞穂かな

   亡き人の生まれ変りか大花野      西川 吉弘
   大津絵の鬼も喜ぶ雨の月
   橋ありて然らば渡る星月夜

   天の川なべて長子の割を食う      西田 唯士
   ライオンの敵はライオン夜ばい星
   さるすべり私小説なら皆にある

   常温は常なる心新走          西谷 剛周
   世の中にこれほど小さき韮の花
   呑み足りぬ女将夜長の天下茶屋

   ミサイルよ来るなと仰ぐ鰯雲      野村 朴人
   虫減るはわれらの命減る思ひ
   スペインの豚は松茸好きと言ふ

   柱岩の黙涼気を滝颪          花谷  清
   滝壺を離れ百歩に常の峪
   宙すべる即ち滝の白濁す

   芭蕉より一茶親しや芋の飯       樋本 和恵
   長き夜やここは静かな吾の居場所
   風抱いて蔦のもみづる甲子園

   秋高し遠嶺に浮かぶ雲一つ       平井芙美子
   山峡に遠の晩鐘雁渡る
   絡まりさう君との縁葛の花

   葉隠れの名立たる句碑や水の秋     本郷 公子
   五線譜に足す流星のピチカート
   蓮の実とぶどちらに転ぶ今日ひと日

   居眠りの大仏殿に雁渡る        前田  勉
   どうしても臍に手のゆくアマリリス
   減反の畦煌と曼珠紗華

   鵙日和少し固めのにぎりめし      松島 圭伍
   秋霖や先見えてなほ遠き道
   秋しぐれ雲に雲立つ嵐山

   学友のあとさき不詳熟柿落つ      的場 秀恭
   手に入れし暇もて余す秋の暮
   言ひ訳の出る幕ならず秋落暉

   動くもの天辺に刺し鵙高音       三宅  侃
   男顔となりたる母や秋うらら
   蟋蟀の上目遣ひに鳴きにけり

   虫すだく三半規管のような駅      三好つや子
   蜂歩く二百十日の皿の縁
   知らぬ間に縮んだわたし麒麟草

   うそまこと記憶をたどる烏瓜      村田あを衣
   若き日の句点や林檎丸かじり
   愁思かなわたしをさがす三面鏡

   獺祭忌どつこいかわうそ生きている   森  一心
   秋彼岸魚も鳥もみな先祖
   ハルカスへ北斎が来る天高し

   坂の灯にジャズの流れる神戸駅    山崎よしひろ
   小鳥来る朝のケトルが笛を吹く
   錦鯉ひかり集めて水の秋

   コンパスの始点終点台風来       養学登志子
   月と星にわかにせわし野分だつ
   秋日和チューブの涸ぶ不易糊

   爽やかに朝の人影風の影        吉田 成子
   自然薯に物言うて老い進みたる
   枯れきつて安堵の色の唐辛子

   オンリーユー秋蚊に刺さる過疎生れ   吉村紀代子
   三カラットのままで落ちず芋の露
   Jアラート心拍数のあがる秋

   娘むこ連れて今年の松手入       和田 燁子
   青空へゆれる寂びしさ吾亦紅
   色づきてはっきり解る式部の実

 (以  上)

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