関西現代俳句協会

2024年10月のエッセイ

酒と俳縁

西谷剛周

 昨日、新日本カレンダー(株)から、来年の「俳句の日めくりカレンダー」掲載許可のお願いの葉書が来ました。
 監修は宇多喜代子さんから神野紗希さんに代りましたが、来年も掲載されるなんて嬉しい限りです。これが来年の掲載句

    酒は常温関鯖の締め具合        剛周

 この句は、斑鳩で行われたNHKの俳句番組の収録に出演された宇多喜代子さんと当時の奈良県俳句協会会長の茨木和生さんの三人で、私がセットした王寺駅前のミシュラン一つ星の居酒屋で呑んだ時に出来た句です。
 暑い日だったので、私が生ビールのあと冷酒を注文しようとしたら宇多喜代子さんが「剛周、冷酒で酒の味が分かるか、酒は常温や」と窘められました。
 その時の肴が関鯖でした。それ以来私は常温のコップ酒が常となりました。
 宇多喜代子さんは、コップ酒は何杯吞んだか分るからいいと言われるのですが、私は途中から分からなくなるので呑みすぎるのは一緒です。
 この時は閉店まで3時間以上呑んで、3人とも二日酔いになりました。コロナ前だから、もう5年以上も前になりますが、懐かしい思い出です。
 コロナでこの居酒屋も閉店し、今はありません。

 坪内稔典さんとも酒が縁で親しくなりました。
 初めて法隆寺子規忌の選者をお願いした時なのですが、電話で「丹波篠山俳句ラリーで、<山車に乗るバンドエイドの膝頭>で先生の特選となり、バンドエイドで新米と地酒一升を貰うなんてと選評を受けた西谷剛周です」と自己紹介をすると「あーあのバンドエイドの句の方ですかと」思い出していただきました。

 法隆寺子規忌の選者に来て頂いたとき何故か意気投合。
 法隆寺子規忌終了後稔典さんから「剛周さん、このあと奈良の居酒屋で句会をするのですが、参加されませんか」と誘われました。
「居酒屋の句会なら望むところです。是非参加させてください」と承諾。
 その居酒屋で私の紫雲英句会の話が盛り上がり、翌年から稔典さんの仲間と句会をすることになり、現在まで続いています。

 こんな感じで酒を通じて私の俳縁は広がってきました。
 久保田や八海山、雪中梅など日本酒は千差万別ですが、酒は銘柄よりも、誰と呑むかで酒の味は決まると実感しています。
 今は本当に酒吞みでよかったと感謝しています。

(以上)

◆「酒と俳縁」:西谷剛周(にしたに・ごうしゅう)◆

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