関西現代俳句協会

2011年9月のエッセイ

東京に負けるな京都

鈴鹿 均

 このタイトルを見て、きっと貴方は訝しんだことだと思います。その説明は最後に譲るとして、話を進めていきます。

 貴方は、私たちが中学・高校生だった頃、学校の行事で耐寒マラソンとか長距離ランニングになると決まって、私が仮病を使って休んでいたのを覚えていると思います。私は、なぜかこの持久力のいる運動を嫌っていた。貴方とは、お互いに野球が大好きで日が暮れるまでよく遊びましたね。

 そんな私たちが、大学の進路が変わったことでいつしか音信が途絶えて、久しぶりに会ったのが、二人とも40才に手が届こうとした時でした。私は貴方に「変わってないね」と。貴方は私に「変わったね」と。お互いの体型のことを、真っ先に口にしましたね。そして、私が医者から「君は、糖尿病患者の予備軍だ。」と言われていると説明したら、貴方が私に勧めてくれたのが、何と体重を減らすにはランニングが一番だということでした。

 貴方は私の過去など、さも忘れたかのように親切丁寧に走り方のアドバイスをしてくれました。その場では取り繕いながら「ふむ。ふむ。なるほど。」と、聞いてはいたものの実行出来るとは思っていない。まあ、試にやってみようと、先ず100m走る。時速8qのジョギング程度。それでも息が上がる。又100m。息はゼイゼイ。何とかトータルで1q走りきる。何だか途方もない距離を走った気分になる。それが、週に2回のペースで3か月も続けると、休まずに走れる。すると1qが5qに、5qが10qと急速に伸びていく。

 この成長を貴方に話すと、大変喜んでくれて次に貴方が私に勧めたのが、タイムを意識しなさいということでした。私は、ランニング用の腕時計と同時にサングラス等ランナーに必要なもの全てを取り揃え、格好は一端のマラソンランナーを気取ることにした。この格好は、練習でも人に見られていると思うと気が抜けない。必然的に徐々に走行タイムが短縮出来る。

 そうこうするうちに貴方は満を持して、あちこちで開かれている大会に私を誘いだしました。若狭マラソンでは、川沿いに菜の花が咲き群れていたのが印象的でしたね。そして、最も過酷なレースが三和の三春マラソン。三春峠の上りは心臓破りの坂道で、それも小雨が交じる厳しいものでした。

  雨止みて三春峠の紅葉踏む  均

 そして、極めつけは地元京都市内を走る京都シティハーフマラソン。毎年5000名が参加するビッグな大会。この大会を貴方と走れるとは思いも寄らなかった。ところが、2007年2月に東京マラソンが始まる。指を銜えて大都市東京マラソン大会の様子をテレビで観戦したのを思い出します。それに合わせるように2009年3月を最後に京都シティハーフマラソンが中止。これを機に貴方は体調不良を理由にランニングを止めたんですね。

 ところが、京都マラソンが2011年3月11日にフルマラソンとして復活することに決定。俄かに私の血が騒ぎだすのを感じる。東京に後れること4年、マラソンのメッカである京都に、「東京に負けるな京都」とエールを貴方と一緒に送りたい。

  春霞先頭集団崩れだす    均

(以上)

◆「東京に負けるな京都」(とうきょうにまけるなきょうと):
                      鈴鹿 均(すずか ひとし)◆