関西現代俳句協会

2008年 2月のエッセイ

「梟」について

−鳥にして鳥にあらずー

林 日圓

 俳句歳時記に、「梟」は夜行性でネズミや小鳥などを捕食するとあるが、前漢の司馬遷の著『史記』(130巻)によると、「梟」は自分を産み育ててもらった大恩ある母親を食う悪鳥らしい。

 また、「?(きょう)(漢字はけものヘンに鏡のツクリ)」は父を食うけもので親不孝の悪獣とされ、何れも親不孝の標本になっている。

 孝は百行の本で、忠と孝は儒教のバックボーンを成す思想である。

 忠孝を重んずる中国では、冬至の日に村中総出で、長い棒を持って梟の棲んでいる森などを襲うて、ふくろ叩きにして捕えて首を切り、棒の先に突きさして辻々に立てて晒し首にする。これを梟首という。

日本でも、江戸時代に罪人の首を棒に突き差して、三条河原にさらす梟首の刑があったが、梟の古事から来ている。

 鎌倉時代に、日蓮聖人の書かれた『開目抄』という大論文に、


「外典三千余巻の所詮に二つあり。所謂孝と忠となり。忠も又孝の家よりいでたり。孝と申すは高なり。天高けれども孝よりは高からず。又孝とは厚也。地あつけれども孝よりは厚からず。・・・・・梟鳥母を食う。母これを捨てず。破?父を害す。父これに従う。」

と申されている。

 「京鹿子」前主宰 丸山海道先生に

  梟や闇より闇へ青き闇

という秀句がある。

  梟や字書の鳥には入れられず   日圓

以上

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