吟行リレー)岡田由季「久米田池~鳥の国際空港」

吟行リレー 岡田由季
久米田池~鳥の国際空港

 大阪南部の岸和田市にある久米田池は、周囲2.6キロメートル、大阪府内最大のため池で、農林水産省のため池百選に選定されている。アクセスはJR阪和線・久米田駅から徒歩約15分。静かな住宅街のなかに位置している。

 この池の起源は古く、天平10年(738年)、干ばつに苦しむ農民を救うため、僧・行基が築造に着手し、14年の歳月をかけて完成させたと伝えられる。池の水は現在でも灌漑用水に使用されているが、灌漑用だけでなく、カワチブナ等の養魚にも利用されている。このため冬季には養魚を捕獲しやすくするために徐々に水が抜かれる。

 池の周囲には遊歩道が整備されており、近隣住民のジョギング・ウォーキングコースとなっている。私がこの池を訪れる目的は野鳥の観察だ。久米田池には年間100種類以上の野鳥が訪れ「鳥の国際空港」と呼ばれ、四季折々に様々な野鳥が飛来する。私は自転車で行ける範囲で探鳥をすることを趣味としていて、久米田池の他に近隣の里山公園、海辺などいくつかの探鳥場所のレパートリーがあるが、鳥は自然のものなので、必ずしも行き会えるとは限らない。半日粘っても、目当ての鳥にほとんど会えずに帰ってくることもしばしば。しかし久米田池に限っていえば、何も見ることができなかった、ということがない。行けば何らかの鳥に出会える。だから少し遠くても自転車を駆ってでかけたくなる。

 カイツブリは年中いるし、春と秋にはシギ・チドリなどの渡りの鳥が立ち寄る。冬季はカモ類が多数来る。真冬になり水がほとんど抜かれるとカモ類は減るが、干潟のような状態になるのでそれを目当てに色々な鳥が集まる。夏には多数いるカイツブリをはじめ、オオバンなどの子育てを見ることができ、芦原ではオオヨシキリがにぎやかに鳴く。

 昨年12月に仲間と吟行で訪れた際には、コウノトリが飛来していて、ヘラサギも来ていた。カモのなかにはヨシガモなどの美しい種も見られた。チドリやシギ、少し珍しいズグロカモメもおり、上空にはミサゴなどの猛禽も飛んでいた。水鳥は森にいる小鳥と比べ、視界の開けたところにいて動きも少ないため、野鳥観察に慣れていない人でも見やすく、楽しんでもらえたのではないかと思っている。

 野鳥以外の見どころとしては、桜並木があるため春は花見ができる。また、だんじりは9月に行われる海側の祭礼が全国的によく知られているが、久米田地区では10月にだんじり祭が開催される。久米田寺へ向けて行われる「行基参り」や駅前でのパレードが見どころで、9月祭礼ほど観光客であふれることもなく、少し涼しくなった時期なのでおすすめである。

 池付近にはほとんど店舗が無く、食事の場所には少し困るかもしれないが、お弁当を持って池畔のベンチで過ごすのも気持ちがよい。鳥たちの姿を眺めながら、ゆっくりとした時間を楽しんでいただきたい。

鴨の群寝ながらついてゆく一羽  由季


岡田 由季(おかだ ゆき)
「炎環」同人。「豆の木」「ユプシロン」参加。句集『犬の眉』『中くらゐの町』。第67回角川俳句賞。YouTube「俳句ファンちゃんねる」