吟行リレー)相田えぬ「市立伊丹ミュージアム」

吟行リレー 相田えぬ
市立伊丹ミュージアム
今年の四月から、市立伊丹ミュージアムの総合案内で働いている。伊丹は江戸時代から酒造りと俳諧文化の栄えた街で、ミュージアムには柿衞文庫をはじめ、美術、工芸、歴史にまつわる展示や施設が集まっている。
そんなふうに書くと、いかにも立派な文化施設の紹介のようだが、わたしにとっては、毎朝出勤して、受付に座り、お客様に道を尋ねられ、電話を取り、時々失敗もしながら一日を過ごす場所なのだ。
それでも「吟行エッセイを書くなら、どこ?」と考えたときに、真っ先に思い浮かんだのが、ここだった。
たぶん、いや、確実に、わたしはこの職場が好きだ。
俳句の街・伊丹で、俳句を書く自分が働いている。そのことを、少し不思議に思うこともある。俳句を知っている、ということが仕事の役に立つ日が来るなんて、想像したこともなかった。
市立伊丹ミュージアムは、一年に数回、有料展覧会が開催される。小規模でアットホームな空間だからこそ実現するマニアックな内容が見どころ。常設展示は伊丹市の歴史について知ることができ、いつでも無料で観覧できる。
江戸時代に建てられた旧岡田家住宅、旧石橋家住宅も自由に見学できるのだが、通り抜けて目的地へ行く地元の方も少なくない。それだけ地域に根差した場所なのだ。とは言え、酒蔵は、夏は暑く、冬は寒い。日陰にこそなっているものの、一歩足を踏み入れると蒸し暑さが襲ってくる。冬は足の先からキンキンに冷えてしまう。これが本物の酒蔵か、と身をもって知ることができる。夏と冬、どちらが吟行向きかは、まだ決めかねている。
わたしが特におすすめしたいのは、柿衞文庫の展覧会だ。創設者である岡田利兵衛(号・柿衞)のコレクションや寄贈された資料を展示している。俳句を好きな人には興味深いものばかりなので、ぜひ足を運んでほしい。
展覧会の関連講座や、俳句コース・購読コース、工芸講座など、受付をしながら興味津々になってしまう講座もたくさんあるので、併せておすすめしておきたい。わたしは展示のくずし字がさっぱり読めないので、講座を受講したほうがいいかもしれない。
そしてなにより、このミュージアムは駅から近い。JR伊丹駅、阪急伊丹駅からそれぞれ徒歩十分ほどの距離にあり、道中には飲食店もある。近くにはイオンモールもあるので、ついでに買い物もできる。
わが街伊丹、自慢のミュージアム。ぜひ一度、足を運んでみてはいかがだろうか。総合案内では伊丹市にある句碑マップも配布している。窓口で声を掛けてみてほしい。もしかしたら、わたしが出るかも。
休憩のお菓子を配る鬼貫忌 えぬ
相田 えぬ(あいだ えぬ)
現代俳句協会員。ネットプリント「よんもじ」メンバー。俳句合同誌『えぬとこうこ』発行人。stand.fm「俳句と暮らす ご自愛ラボチャンネル」 https://stand.fm/channels/694381e94e940c45b52450bd


