関西現代俳句協会

会員の著作(2020年事務局受贈分)

  句集

『水運ぶ船』

石井清吾

本阿弥書店 2020年12月10日発行



  海峡の夏へルアーを飛ばしけり

いま港の突堤から遠くヘルアーを飛ばした瞬間を詠みとめた。海の育、空の育、そして入道雲も出ている真夏。その景の中、力強く活気のある、そして単純化した表現が魅力だ。清吾さんの俳句のキャリアは始まったばかり。精神のしなやかさが、あるので、ますます句の世界も広がることだろう。

大島雄作・・・・・「序」より

 

 句集名は、俳壇賞受賞作品のタイトル句〈水族館へ水運ぶ船夏はじめ〉に因みました。ある日港で見かけた水色の船が、和歌山県沖から大阪の「海遊館」に海水を運ぶ船だと知った時の驚きを詠んだ句です。中に海を抱いて運ぶ船は、育った長崎を離れ今は明石で暮らす私と海との関係を象徴するようです。また、地球に生きる私たち生物は、未来へと「遺伝子を運ぶ船」であるとともに、体に含んで「水を運ぶ船」でもあります。

石井清吾・・・・・「あとがき」より


○帯「自選十句」より

 柳絮飛ぶトートバッグに唐詩選

 秋風やわが名の印の売れし穴

 今がわが家族の旬か祭笛

 雪積まぬ右手よ平和祈念像

 お四国は独鈷のかたち鳥渡る

 不器用な兄の来てゐる雛納

 葉桜や真水ですすぐ試験管

 水族館へ水運ぶ船夏はじめ

 夏来たる書道部員のスクワット

 弓袋白雨の中を駆けにけり


○発行所

 本阿弥書店

 〒101-0064
 東京都千代田区猿楽町2-1-8 三恵ビル

 電話 03-3294-7068

 (定価 2,800円+税)

◆句集『水運ぶ船』: 石井清吾(いしい・せいご)◆

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