関西現代俳句協会

会員の著作(2020年事務局受贈分)

  句集

『奎星』

小池康生

飯塚書店 2020年10月25発行



大患を得た人間は、俳句も変わるようだ。
変わらざるを得ない状況は、未踏の視座を獲得
するからだ。この作者の数年間の〝闘い〟を見ていると
いのちにとことん向き合うこともせず、漫然と生きている
ことを恥ずかしく思う。

中原道夫・・・・・栞文より


 そんなある日、辞書を繰っていると「(けい)」という言葉に出合い、雷に打たれるような衝撃を受けた。〈二十八宿の一つ。西方の宿で、文運をつかさどり、この星が明らかであれば天下は太平という。奎宿。とかきぼし〉。〈北斗七星の第一星から四星までを示す。中国では文章をつかさどる「神」と伝えられている〉。…西方、文運というキーワードにゾクッときた。電子辞書を抱えながら、その場で「奎」という名の雑誌を出そうと決めた。そして、わたしに相談を持ちかけた人たちに今度はこちらから声を掛け、雑誌が動き出した。創刊から四年、現在、季刊で15号を発行した。大学生や二十代の社会人が多いが、若者ばかりではなく七十歳を越えたメンバーもいる。雑誌を出し、月に二回のリアル句会を続けているのは、若い人の世話を焼いているのではなく、自分の鍛錬の場を作っているのであり、それが他の同人にも利用されればいいと考えている。

小池康生・・・・・「あとがき」より


○帯「自選十句」より

 ななふしのやうにどこかにゐてくれる

 邦題がとつてもいいの日脚伸ぶ

 裸木のときが全き完成形

 巣箱掛け最初の雨が降つてをり

 蝶来る棺の窓を開けたれば

 鹿の子の咥へてすぐに後じさり

 画家の眼を通したやうな裸かな

 唐辛子売るや辛さを詫びながら

 魞挿すに名山ふたつ目で結ぶ

 風一重二重三重八重芒原


○発行所

 飯塚書店

 〒112-0002
 東京都文京区小石川5丁目16-4

 電話03-3815-3805

 (定価 2,000円+税)

◆句集『奎星』: 小池康生(こいけ・やすお)◆

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