関西現代俳句協会

会員の著作(2018年事務局受贈分)

  句集

『水辺のスケッチ』

金山桜子

ふらんす堂 2018年6月1日発行



  光りつつ波は泥打つ葦の角

 桜子さんは琵琶湖に近いところに住んでおられる。いわば日々暮らしの場が水の国である近江なのだ。旅人にはない水の近江との親和が句集『水辺のスケッチ』の句世界の展開につながっている。

宇多喜代子・・・・・序文より

 

 滋賀県に居を移して三十年が過ぎました。
 句集を編むという行為は、はからずもその三十年を振り返ることとなりました。
 多くの人と出会って、現在の私があることを実感しています。
 句集に収められた俳句は、ごく一部を除いて、琵琶湖の周辺を仲間と歩いて、心の動くままを形にしたものばかりです。湖のぐるりで人が生活するこの土地は、四季の変化に富んでいて、「自然」というものが、人もその一部であるということを実感させてくれる場所でした。

金山桜子・・・・・「あとがき」より


○帯「自選十五句」より

 あしかびに水あたたかき日なりけり

 初蛙震へる腹を草の上

 田へ下る轍はこべら埋めつくす

 無いものを確かめてゐる仔猫かな

 かささぎの恋石室に舟と星

 行々子あぶくはじけるやうに鳴く

 水底に触るるあごひげ大鯰

 波のたりのたりと岸へ蓮の花

 まひまひの肉が朽葉をかかへこむ

 緑蔭は三本ほどの栃なりき

 ががんぼのあらがふ風のありにけり

 涼新た化石に蟹の爪白く

 大岩とおこなひの神しぐれけり

 水鳥の抱き人形の声に似る

 猫が尾を垂れて入りゆく枯野かな


○発行所

 ふらんす堂

 〒182-0002
 東京都調布市仙川町1-15-38-2F

 電話 03-3326-9061

 (定価 2,667円+税)

◆句集『水辺のスケッチ』: 金山桜子(かなやま・さくらこ)◆

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