関西現代俳句協会

会員の著作(2018年事務局受贈分)

  句集

『砂時計』

矢野夏子

2018年5月31発行



 句集「砂時計」は、私の第一句集であり、最後になるであろう句集です。
 思わぬ事から始めた俳句ですが、十九余年も続くとは思いもしませんでした。
 平成八年九月、真夜中に突然、両目が激痛に襲われ視力を失ってしまいました。両眼閉塞隅角緑内障と診断され、レーザー光線治療が二日続けられましたが、何の変化も見られず、元の暗闇に戻ってしまいました。眼の手術のできる状態になる日までは不安と恐怖の日が続きました。
 待っていた手術の日も決まり、その術後に、夕日の明るさが眼帯の隙聞から感じられた時の嬉しさは、忘れることができません。とはいえ、眼が見えるようになったわけではないので不安ばかりでした。
 平成十年十月のことでした。不安な私を常に気に掛けてくれていた夫は、コープカルチャーセンターの俳句へと連れ出してくれました。初めて習う俳句で、現代俳句の「青玄」で岡崎淳子先生と言うよき師と巡り会い、またよき友と出会う事が出来ました。そして、人生最大のピンチでも幸せが来るとともあるのだと思えるようになり、治療に専念することが出来ました。
 或る日、医師に奇跡的だと言われるほど、視神経が元に戻ってきたと告げられ、少しずつ物も見えだしましたが、変わらず不安は付き纏っていました。また私がいつ悪い状態になるかも知れないと心配した夫が、二人の思い出作りにと、ゆったりとしたヨーロッパ旅行に連れ出してくれ、徐々に人の顔も物の色も見える程になりました。

矢野夏子・・・・・「あとがき」より


○制作所

 神戸新聞総合印刷

 (非売品)

◆句集『砂時計』: 矢野夏子(やの・なつこ)◆

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