関西現代俳句協会

会員の著作(2016年事務局受贈分)

  句集

『砂時計』

古座岩康子

友月書房 2016年12月吉日発行



 私の育った朝鮮・京城(現韓国・ソウル)は冬の寒さが酷しかった。郊外を流れる大河漢江がびっしりと凍り、私達女学生はスピードスケートの靴を履いて、寒風に頬を真赤にしつゝ元気に滑った。学校行事としてのスケート大会は、秋の運動会にも劣らぬ盛大さで全校生徒がスピードを競い合った。仲のよい友達と氷の上に寝ころんで夢を語り合ったことも懐かしい。
 私の青春は戦争の真只中に過ぎていった。昭和六年小学校入学の年に満州事変、女学校入学の昭和十二年盧溝橋事件から長い支那事変へと進んだ。昭和十六年女学校五年の十二月八日、真珠湾攻撃によって、大東亜戦争が勃発し世界大戦へと拡がっていった。早朝勇ましい軍艦マーチと共にラジオから流れる大本営発表を父と共に聞いたあの日の緊張は忘れることは出来ない。

         (中 略)

 国敗れてどれ程多くの人が命を落とし、どれ程多くの人が辛酸を祇めた事か。戦争ほど悲惨なものはない。二度と愚かな戦争を起してはならないと強く思う。

  約束は異国の夏に置きしまゝ

  忘れ得ぬこと忘れまじ夏怒涛

古座岩康子・・・・・「回想」より

 

 ふとした縁で兜子館の門を叩き、「渦」主宰・赤尾恵以先生のご指導のもと、俳句を学んで参りました。もともと芸術的感性に乏しい私ですが、言葉の力、一言の重み、俳句に魅せられて、遅々とした歩みながら振り返れば二十余年が経って居ります。

古座岩康子・・・・・「あとがき」より



○発行所

 友月書房

◆句集『砂時計』:古座岩康子(こざいわ・やすこ)◆

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