関西現代俳句協会

会員の著作(2016年事務局受贈分)

  句集

『遠郭公』

細原順子

文學の森 2016年10月9日発行



 遠郭公径は二つに岐れゐて

阿蘇の麓の目的地でバスを降りたその時、突然郭公が鳴きながら裾野に広がる棚田の上を渡っていった。遠い空の彼方に消えた後も澄んだ声が耳に残った。一瞬立ち止り、ここから道は二つに分かれている、選んだ道を迷わず行く郭公の直情径行に息をのむ思いだった。聴覚と視覚が同時に捉えた至福の風景にこの句が生れた。

細原順子・・・・・帯文より


○帯「自選十句」より

 朧夜の心の錠はかけずおく

 早暁の宙切る燕いのち美し

 どこからが過去大噴水の立ち上がる

 鼻縄の仔牛繋がれ夏の糶

 カンナ燃え少年に棲む腹の虫

 航跡は痛みにも似て雁渡し

 毘沙門へ身幅の道や柚子は黄に

 月の鳰一人遊びを覚えたる

 碧天へ魂の抜けゆく枇杷の花

 海峡に流れてゆくや鷹一声



○発行所

 文學の森

 〒169-0075
 東京都新宿区高田馬場2-1-2 田島ビル8階
 電話 03-5292-9188

 (私家版)

◆句集『遠郭公』: 細原順子(ほそはら・じゅんこ)◆

▲会員の著作一覧へ