関西現代俳句協会

会員の著作(2014年事務局受贈分)

  句集

『春雷』

中俣 博

草樹俳句会 2014年11月発行



 中俣さんと話していますと、

  吾が日々の単純明快白絣
  暑ければ日陰へ逃げるだけのこと
  梅雨菌わからぬことは考えぬ

から窺えるように、現世の厄介や憂き事を俳句に持ち込まない、まずそんなさっぱりしたよさがあります。対人関係や俳句の読者に負担をかけないという人物像と俳句作品の基がこんがらがることなく同位に動いていて、対話をしているような気分になるのです。

宇多喜代子・・・・・「跋」より


 此度は、初めての句集である。句集名の「春雷」は、桂信子先生の推薦句となった“春雷の天の地団駄やも知れず”に依る。擬人法は嫌いと言われる桂先生にお採りいただいた句である。
 俳句との出合いの喜びは多くの人によって言い尽くされているが、私は俳句を学ぶことによって、数数の古今の名句と出合い、多くの俳句の先輩や仲間と出会うことが最高と思っている。

中俣 博・・・・・「あとがき」より


○帯「自選十二句」より

 耕耘機零す四温の土の黒

 春雷の天の地団駄やも知れず

 遠峰の色を重ぬる立夏かな

 父の忌や遠目にそれと梅の白

 吉野山桟敷の下の蟬時雨

 飯うまし春の立ちたる陽の光

 紋黄蝶吉野帰りの靴洗う

 睡眠はたつぷり林檎丸齧り

 秋篠寺青田へ向きて南門

 九州の真んなか山女太りたる

 どの家へも道と電線明易し

 柿落葉虫の都合の穴の形


○発行所

 草樹俳句会

 (非売品)

◆句集『春雷』: 中俣 博(なかまた・ひろし)◆

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