関西現代俳句協会

会員の著作(2014年事務局受贈分)

  句集

『海市』

宮田武彦

ブイツーソリューション 2014年10月30日発行



  木洩れ日のなか色鳥の枝移り

 宮田さんの句は人目を引くような情景や発想よりも、穏やかで平明な作品が主流で、地味ながら静かにゆっくり胸に広がるように感動を呼ぶ。この句集の作品が著者の名付けた句集名「海市」(蜃気楼)のような存在として読者の心に消えがたく残ることを願う。

吉田成子・・・・・「跋」より


 題名の「海市」は春の季語「蜃気楼」の傍題である。
 この世に生きて経験することはすべて無常であり、俳句の題材となるものも然りである。しかしそれらは、蜃気楼が水平線や地平線の彼方に隠れているものの影であるように、時空を越える根源存在の影である。

宮田武彦・・・・・「あとがき」より


○帯より「自選十五句」

 水底に枝横たはる日永かな

 白砂のうへ料峭の月の影

 物なべて少し浮きけり朧の夜

 束の間ともとこしなへとも花の昼

 螢火の息づく闇は瀬音のみ

 夕映えに光微塵や瀬戸の海

 馬が来てまた馬が来て走馬灯

 回り舞台回れるごとし野分晴

 羽虫一つ光りて過ぎし草の花

 木洩れ日のなか色鳥の枝移り

 甲板の寝椅子にひとり星月夜

 鴨ひとつ無尽の綺羅の中に浮く

 暮残る雪の連峰神住めり

 ぎりぎりのおのれのかたち大枯木

 花替へて墓あらたまる年用意


○印刷・製本

 ブイツーソリューション

◆句集『海市』(かいし): 宮田武彦(みやた・たけひこ)◆

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