関西現代俳句協会

会員の著作(2014年事務局受贈分)

  句集

『瀉瓶』

男波弘志

田工房 2014年1月10日発行



 今回の装丁は「水瓶」の背後にあった大陸風の寛容なる精神と、水瓶そのものが持つ慄然たる慈悲心、それらが一如となって読者諸兄姉のてのひらを、まるで声明のたゆたいにあるように、大都長安の五色のざわめきにあるように、刻というものの本性を無常の刻印から脱却し、大都長安の寛容の「今」を、今ここに一冊の本として顕わしたのである。

男波弘志・・・・・「あとがき」より


○裏表紙 自選十句より

 能面に顳顬のなく春の月

 春の野の刳味は母のゑぐみかな

 誰からももらふ螢火そばから捨て

 たつぷりと吾が舌はあり蛇過ぎる

 狂はぬ母尾のなき蜥蜴今日も出づ

 揚羽蝶どの曲線も従へり

 他人事のやうに鬼灯市にゐる

 一点に群る銀河父そこに

 おんおんと胡桃の芯にある掟

 マッチ磨つてことば以外のもの照らす

        *   

 生者の中に尽くることのない刻

 生者の中に亡ぶことのない詩

 生者の中に移ろうことのない声

 生者の中に凋むことのない乳房

 生者の中に萎えることのない男根

 ここに無常の系譜畢る


○発行所

 田(でん)工房

 〒652-023
 神戸市兵庫区都由乃街1丁目1-8

 電話 078-521-2751

 (定価 一萬圓)

◆句集『瀉瓶』(しゃびょう): 男波弘志(おなみ・ひろし)◆

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