関西現代俳句協会

会員の著作(2013年事務局受贈分)

  句集

『霧の左岸』

中井之夫

角川書店 2013年7月1日発行



  橋脚が水割っている冬の景

 私は今、「人生とは人間出会いの歴史である」と云ったある若い日の牧師の言葉を思い出している。
 そして「風」の沢木欣一先生と俳句との出会い。
 そこから広がっていった数多くの恵まれた出会いが、私の人生に如何に豊かな数々のものをもたらしてくれたかを思い、感謝の念で一杯である。

中井之夫・・・・・「栞文」より


○帯「自選十二句」より

 木々の影日ごと濃くなる雪解川

 この爺で終る老舗の桜餅

 春昼や詩集広げしままの留守

 引き揚げし蛸壷覗く夏の月

 詩の湧く沖へ広がる鰯雲

 越中の川みな濁る風の盆

 大壷に野の花溢れ良夜なり

 彼岸花も双眼鏡も鸛の視野

 十三夜樹影の中を通夜の客

 山門の僧が見上げる秋の声

 雪来るか左岸の森の風の音

 橋脚が水割っている冬の景


○発行所

 東京四季出版

 〒189-0013
 東京都東村山市栄町2-22-28

 電話 042-399-2180

 (定価 2,800円+税)

◆句集『霧の左岸』: 中井之夫(なかい・ゆきお)◆

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