関西現代俳句協会

会員の著作(2013年事務局受贈分)

  句集

『蝶のみち』

岡崎淳子

現代俳句協会 2013年4月25日発行



  晩年の右手に弾む手毬歌

のような生涯の一冊――
しかし、俳句はここからの思いも亦真実。

「帯文」より

  歩けなかった径見えてくる冬の山

 この句から書きはじめたい。初出は一九九〇年四月発行の「青玄」434号である。なぜ初出にこだわるかと言えば、岡崎淳子(以下敬称略) はその とき道が見えたのだ。俳句の道である。それまで俳句の表現者としての言葉が胸に問えて、どうしても出てこなかった。

たむらちせい・・・・・「解説」より

 〈蹌踉デッキで 死ねる白さの夜の浪で〉伊丹三樹彦――俳句でここまで詠めると知った驚きと板書の一句の美しさに惹かれあの日、口語表現・無季俳句容認の「青玄」で学び始めたのは一九七七年秋でした。以後予期しないできごともありましたが、どこかで俳句に支えられてきました。

岡崎淳子・・・・・「あとがき」より


○「帯文」と「解説」より十五句

   

 落日の加速ガラスのエレベーター

 かの世からはらり初蝶ひらりと子

 尽命の白かひとえの冬の薔薇

 その奥に沙羅散りそめて 暮色の門

 ふっくらと言霊つつむ泰山木

 白木蓮訣れるために会いにゆく

  二上山ふたかみの大いなる呼気五月来る

 遠野分あわうみの魚うら返る

 流灯のあとヒロシマの水平ら

 寒暁の暗さ 地震の火の速さ

 倒壊の無明の町に寒暮くる

 冬かもめ死者千人の市民葬

 左手は淋しい 夏柑抛っては受けて

 少年の母でありし日蝶のみち


○発行所

 現代俳句協会

 〒101-0021
 東京都千代田区外神田6-5-4 偕楽ビル7階

 電話 03-3839-8190

 (定価 1,500円(税込))

◆句集『蝶のみち』: 岡崎淳子(おかざき・じゅんこ)◆

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